12上の御曹司と女子高生は愛を育めない

車は渋滞に巻き込まれたままほとんど動かない。
光生さんは黙り込んだままで、私はどうしていいのかわからなくなってきた。


「あの」


流石にこの沈黙が辛くてそろっと声をかけてみる。
だけど光生さんはこちらを見ることも無く黙ったまま。

よほど気分を害してしまったかもしれない。
ずけずけと人の人生に口出ししてしまったのはあまりに失礼すぎた。
まずは謝らなきゃと、私は再度意を決して声を出そうとした。


「なぁ、紫央里」


あまり力の入っていないというか、眠そうにも思えるような気怠げな声に、はい、ととりあえず返事をする。


「お前はほんとお人好しだな」


ん?と眉間に皺が寄る。
何でそこに行くのだろう。


「俺の方が子供かも知れない」

「え、今更自覚ですか?」


思わず突っ込むと、ははっ、と笑い声。それはさっきよりも声に力が入っていた。


「人生、出逢いってのはほんとわからないものだ」

「そうですね、私も金持ちのお坊ちゃまに交際相手のフリをしろとか言われるなんて、漫画の中の世界だけだと思ってましたよ」

「漫画だとあるのか」

「割と」


へぇ、と楽しそうな声が返ってきた。

ようやく事故現場を通り過ぎ、一気に車が動き出す。
二車線空いていたのに、何でこんなに詰まっていたのだろう。
そんな私が思っていた疑問に答えるように、


「見物渋滞もあったんだろ。事故現場が見たいってのろのろ運転するからな」

「わからなくは無いですけど、それでまた事故起こしちゃ意味ないですよね」

「そういうもんだろ、人の不幸は蜜の味、ってな」


車が通常のスピードで流れ出すと同じように、光生さんの声も言葉も元通りになってきている気がしてホッとした。

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