12上の御曹司と女子高生は愛を育めない
おそらく私は光生さんの地雷を踏んだ。
それを咎めることも無く流したのだから、やはり遙に大人だと痛感する。
「おっと、で、本題。あのスマホは持っておいてくれ。
さっき話したとおり、本妻は俺を追い落として自分の息子を次期社長にしたいと思っている。
高校生と交際なんてのはむしろ俺のスキャンダルとして利用したいだろうが、父親が会社の不利益になると止めているはず。
だが何が起きるかわからないんでな」
「そんな物騒なお家騒動に巻き込んだのと、あのネクタイはどう考えても同価値じゃないですよね」
元々はネクタイの弁償が発端。
だが三ツ沢グループのお家騒動に巻き込まれてしまってこちらは大迷惑。
スマホを持たないと危険と言わんばかりではたまらない。
「脅したいわけじゃ無い。お前の状況をいつも把握しておきたいんだよ」
「人はそれをストーカーと呼びます」
「愛にそういう言い方はどうかと思うが」
「ますますストーカー発言ですね」
光生さんの本音はどこにあるのだろうか。
もう一人の母親が何を仕掛けてくると言うかわからないし、本当にそれだけが理由で私の状況を把握したいのだろうか。
気楽なつもりで受けたはずの交際相手の芝居が、こんなに大事になるだなんて。
それに、社長になりたいとか、何か本当の気持ちは聞きたいけれどここまで話しを聞くと聞きにくい。
「やっぱり何が起きるかわからなくて怖いんですけど、いつになれば嘘だってご両親に言うんですか?」
結局早くバラしてくれれば良いこと。
なのに光生さんは無言で運転を続けている。
そろそろ自宅の近くだ。
私は何度目かの同じ質問を怒りながらすれば車が停まった。
「こんな面白い恋人を簡単に手放すわけ無いだろ?」
こちらを向いてニヤッと笑った光生さんを見て、先ほどまで私の心の中で好印象となっていたポイントが一気に消されていく。
無言で車を降りようとしたけれど、やはりドアが開かない。
考えてみたら最初も拉致みたいに連れて行かれたんだった。
その間に光生さんは手際よくスマホの電源を入れて何やら作業している。