12上の御曹司と女子高生は愛を育めない
「光生さんが今日とても疲れている中考えてあの場所を予約してくれたこと、そもそも愛情不足なのも高校生の私ですらわかります。
悪い人でも無いですし、あの人なりに気遣おうとしたのも理解しています。
ですがあの人は結局の所、身勝手です。
私は彼のお母さんでもなければオモチャでも無い。
いい加減あの人から解放されたい、ただそれだけです」
春日部さんはただ聞いているだけで黙っていた。
今日のこともフォローしていた人だ、私が高校生でも光生さんのことを一番に思っているのだろう。
「多くのご迷惑をまだ高校生の川井様におかけして、光生様に変わり謝罪申し上げます」
私より遙に年上の春日部さんが高校生に頭を下げている。
申し訳ないと言うより、そんなことをさせる光生さんに苛立つ。
こんなに思っている人が側に居るのなら、それこそ大切にすべきなのに。
「どうか本日はご自宅に送らせて頂けないでしょうか。
帰る途中に何かありましては川井様のご家族に顔向けできません」
光生さんの名前を言わず、うちの家族のことを言われると断りにくい。
おそらくわかっていっているのだろう。
「本当に自宅に送って頂けますか?
急に光生さんと会わせるような罠はありませんか?」
「もちろんです。今の私の仕事は川井様をご自宅にお送りすることのみですので」
穏やかに微笑む春日部を前に、これ以上ごねるのは止めた。
桃にはそこで信じて乗るのが悪いと言われそうだけれど、きっとその言葉に嘘は無いと思うから。
私は素直に従い車で自宅に送って貰うことになった。
どこに寄ることも、光生さんから電話がかかってくることも無く自宅前についた。
ドアを春日部さんが開けてくれ、私は車を降りると頭を下げ礼を言う。