12上の御曹司と女子高生は愛を育めない
「川井様、僅かの間でしたが光生様の心の支えとなって下さいましたこと、心より感謝致します。
きっと光生様の変わられるきっかけになったと思います」
「いえ。こちらこそ高校生では考えられない豪華な体験をさせて頂きました。
春日部さんもお気遣い頂いたのにすみません。
あと、光生さんに伝えておいて下さい、健康第一で生きろ、と」
春日部さんは少し寂しげな顔をして、私に礼を言うと帰っていった。
家に帰ればやはり家族がわいわい質問してくるので、正式に別れたよ、と言うと母親がびっくりし、父親は複雑そうな顔になった。
まぁこれで父親に何かしてくるような事は無いだろう。
ようやく繋がりが消えた。
二段ベッドの上で寝転がりながら今までのことが走馬灯のように蘇る。
不思議な経験だった。
まず高校生が味わえないことばかり。
だけれどあの家は嫌いだ。
誰が悪いと言えばお祖父さんで、その次はお父さんだろう。
光生さんが仕事にとても真面目なのはわかる。
でも、それ以外の大切な物を学べなかったのは何だか可愛そうに思いつつも、もう違う世界のことだと目を閉じた。