真実の愛は嘘で守って・・・。
「そろそろ違う場所にもご案内しますね。敷地が広大なのであっちには、きゃっ!」

俺の方を向いて後ろ向きに歩いていたせいで、後ろに転倒しそうになる小夜を危機一髪で支える。

「大丈夫ですか?」

「あっ、はい!すっ、すみません。もう、大丈・・・きゃっ」

「ちょっ・・・」

ちゅっ。

えっ?

俺から慌てて離れようとして転びそうになった小夜に掴まれ、あろう事か俺は小夜の上に倒れ込み、さらに彼女の唇と俺の唇が重なってしまった。

えっ、キス、してる?

思考回路が停止する中、再び俺の思考を動かしたのは琉偉の声だった。

「あれ?いつの間にそんなに仲良くなったの?」

ハッと声のする方を向くと琉偉と優李の姿が目に入る。

俺と小夜は慌てて起き上がり、頭を下げる。

「琉偉様、優李様、今のは・・・」

「いいよ、いいよ、何も言わなくて。
従者同士仲良くなってくれて嬉しいよ僕は。ねっ、優李ちゃん?」

「優李様、これはっ・・・」

「そうね。私たち邪魔したみたいだし、別の所に行きましょう」

優李は、俺の弁明を聞くこともせず、笑顔で琉偉とその場を後にした。

そっか。優李にとって俺がどこの誰とキスしようが、どうでもいいことなのか。

なんで俺は、優李が嫉妬するなんて思ったのだろう。

ただの従者にそんなこと思うはずがないのに。

身の程知らずの思いを咎めるかのように、空には先程まで輝いていた星々に代わり稲妻が走った。
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