真実の愛は嘘で守って・・・。
【愛してる】Side楓
壮大なパイプオルガンの演奏に合わせて、バージンロードを歩く新婦。
新郎がそのベールをあげると、その姿は誰もが息を吞む程美しい。
俺がこの世で一番愛する人は、別の男と神の前で永遠の愛を誓い、その証としてキスを交わす。
幸せそうにはにかむ2人を、その場にいる全員が盛大に祝福した。
「優李様、今日は一段とお美しいですね」
「琉偉様もいつにも増して素敵です」
従者同士で、互いの主人を褒め合う。
「改めて、本日からよろしくお願いいたします」
「こちらこそ」
このよろしくには色んな意味が含まれている。
だけど、それが分かるのはこんなに大勢人がいる中で、たった4人だけ。
結婚式が終わり、俺たちは優李と琉偉の新しい2人の屋敷に戻って来た。
家族からは反対されたが、2人が引くことはなく、湖の畔の別荘を改築し2人の新居にした。
また、使用人も最低限しか連れて来なかったので、俺たち従者の仕事はかなり増えることとなったが、そんな苦労はなんてことない。
むしろ2人で決めた完璧に嘘がつけるよう、結婚式が終わるまでは主人と従者以外の関わりを持たないという約束を守るのに、忙しい方がちょうどよかった。
「約1年。長かったな・・・」
「人生はまだまだ長いよ」
「優李様!」
慌てて後ろを振り返る。
「気配消すのやめてくださいよ」
「いくらここが隠し部屋でも来る時にバレちゃダメでしょ?ふふっ」
そう。改築する際に、隠し部屋とそれぞれの寝室に繋がる隠し通路を琉偉がつくらせ、それに関わった設計者たちの記憶は、優李が碧色の力を使って忘れさせた。
結婚式で疑う余地がない程、幸せな新婦を演じきり、暴走気味だった碧色の力も使いこなし、気配の消し方まで覚えるなんて。
1年前、不安で震えていた少女はもうどこにもいない。
「変わられましたね」
「まぁ、人妻になっちゃったしね」
明るく、だけどどこか切なげに笑って優李はそう言った。
「俺のせいで、たくさん嘘をつかせて、強くさせてすみません」
そんな俺の謝罪が気に入らなかったようで
「もう、いつまでその口調なの」と怒られてしまった。
「それに、そんな言葉聞きたかったんじゃないんだけど」
「ごめん。じゃあ、一番言いたかったこと言っていい?」
「うん」
ずっと思っていて、ずっと伝えることを諦めていた言葉。
「優李、愛してる」
ようやくそれを彼女に伝えることができた。
「やっと聞けた」
「うん、やっと言えた」
「私も、楓をずっと愛してる」
綺麗な碧色の瞳は、涙でさらにきらきらと輝いて、まるで宝石みたいだ。
こんな綺麗な瞳と笑顔を俺だけに向けてくれている。
その幸せを噛みしめながら、優李の唇に自分のそれをそっと重ねた。
いつかしたキスとは違い、触れるだけの優しいキス。
「これもやっとできた」
「ふふっ、そうだね」
キスしたあとに顔を見合わせて笑える、そんな日が来るなんて、あの頃の俺たちには想像できなかった未来だ。
「優李、ありがとう」
「何が?」
「全部」
殺されるはずだった俺を助けてくれたこと。
そんな俺を従者にして側にいさせてくれたこと。
そして俺を愛してくれて、今こうやって愛させてくれてること。
ありがとう、愛してる。どれだけ言葉にしても言い足りる気がしない。
だから・・・。
「優李」
「うん?」
「優李のこと、もっと愛させて?」
言葉だけで足りないなら、それ以外の方法でも愛したい。
そんな俺の思いを受け入れるかのように、優李はふわっと優しく微笑む。
「いいよ。楓の好きなだけ、いっぱい愛して」
先ほどまでと違う欲を宿した瞳に、どちらからともなく顔を近づけ、深く甘いキスを交わす。
嘘にまみれた俺たちの人生で、真実なのはこの愛だけ。
だから、この瞬間だけは、心のままに2人で愛し合おう。
新郎がそのベールをあげると、その姿は誰もが息を吞む程美しい。
俺がこの世で一番愛する人は、別の男と神の前で永遠の愛を誓い、その証としてキスを交わす。
幸せそうにはにかむ2人を、その場にいる全員が盛大に祝福した。
「優李様、今日は一段とお美しいですね」
「琉偉様もいつにも増して素敵です」
従者同士で、互いの主人を褒め合う。
「改めて、本日からよろしくお願いいたします」
「こちらこそ」
このよろしくには色んな意味が含まれている。
だけど、それが分かるのはこんなに大勢人がいる中で、たった4人だけ。
結婚式が終わり、俺たちは優李と琉偉の新しい2人の屋敷に戻って来た。
家族からは反対されたが、2人が引くことはなく、湖の畔の別荘を改築し2人の新居にした。
また、使用人も最低限しか連れて来なかったので、俺たち従者の仕事はかなり増えることとなったが、そんな苦労はなんてことない。
むしろ2人で決めた完璧に嘘がつけるよう、結婚式が終わるまでは主人と従者以外の関わりを持たないという約束を守るのに、忙しい方がちょうどよかった。
「約1年。長かったな・・・」
「人生はまだまだ長いよ」
「優李様!」
慌てて後ろを振り返る。
「気配消すのやめてくださいよ」
「いくらここが隠し部屋でも来る時にバレちゃダメでしょ?ふふっ」
そう。改築する際に、隠し部屋とそれぞれの寝室に繋がる隠し通路を琉偉がつくらせ、それに関わった設計者たちの記憶は、優李が碧色の力を使って忘れさせた。
結婚式で疑う余地がない程、幸せな新婦を演じきり、暴走気味だった碧色の力も使いこなし、気配の消し方まで覚えるなんて。
1年前、不安で震えていた少女はもうどこにもいない。
「変わられましたね」
「まぁ、人妻になっちゃったしね」
明るく、だけどどこか切なげに笑って優李はそう言った。
「俺のせいで、たくさん嘘をつかせて、強くさせてすみません」
そんな俺の謝罪が気に入らなかったようで
「もう、いつまでその口調なの」と怒られてしまった。
「それに、そんな言葉聞きたかったんじゃないんだけど」
「ごめん。じゃあ、一番言いたかったこと言っていい?」
「うん」
ずっと思っていて、ずっと伝えることを諦めていた言葉。
「優李、愛してる」
ようやくそれを彼女に伝えることができた。
「やっと聞けた」
「うん、やっと言えた」
「私も、楓をずっと愛してる」
綺麗な碧色の瞳は、涙でさらにきらきらと輝いて、まるで宝石みたいだ。
こんな綺麗な瞳と笑顔を俺だけに向けてくれている。
その幸せを噛みしめながら、優李の唇に自分のそれをそっと重ねた。
いつかしたキスとは違い、触れるだけの優しいキス。
「これもやっとできた」
「ふふっ、そうだね」
キスしたあとに顔を見合わせて笑える、そんな日が来るなんて、あの頃の俺たちには想像できなかった未来だ。
「優李、ありがとう」
「何が?」
「全部」
殺されるはずだった俺を助けてくれたこと。
そんな俺を従者にして側にいさせてくれたこと。
そして俺を愛してくれて、今こうやって愛させてくれてること。
ありがとう、愛してる。どれだけ言葉にしても言い足りる気がしない。
だから・・・。
「優李」
「うん?」
「優李のこと、もっと愛させて?」
言葉だけで足りないなら、それ以外の方法でも愛したい。
そんな俺の思いを受け入れるかのように、優李はふわっと優しく微笑む。
「いいよ。楓の好きなだけ、いっぱい愛して」
先ほどまでと違う欲を宿した瞳に、どちらからともなく顔を近づけ、深く甘いキスを交わす。
嘘にまみれた俺たちの人生で、真実なのはこの愛だけ。
だから、この瞬間だけは、心のままに2人で愛し合おう。