真実の愛は嘘で守って・・・。
「お食事お持ちしました」

「はーい」

返答があったので「失礼します」と中に入り、すぐさま「失礼しました」と出ていく。

あの、バカ!着替え中ならはーいとか返事するなよ。

「楓?」

入ると同時に出ていった俺を不思議に思い、パタパタと足音が近づいてくる。

俺はドアノブを自分側に力いっぱい引っ張り、ドアが開くのを阻止する。

「えっ!ちょっと楓?なんで開けてくれないの?」

「なんで開けてもらえないか考えてください」

「・・・あっ、着替えか!大丈夫、もう服着たから」

「ボタンもちゃんと上まで留めた?」

間があく。
やっぱり留めてなかったのか。

「はい。ちゃんと留めた!」

疑いながらもドアを開くと、確かにちゃんと上までボタンも留まっている。

「ねっ、ちゃんと服着てるでしょ?」

なんでドヤ顔なのか分からないけど、それすら可愛いと思ってしまう俺は重症だ。

「リボンも結べてたら完璧だったな」

「リボン結ぶのは楓の仕事でしょ」

そう言って、さも当たり前かのようにリボンを差し出してくるので、俺はそれを受け取って優李の首にまわす。

その時に香る甘い華やかな匂いに酔って、柔らかそうな胸に手が当たってしまわないよう気を付けながら結ぶのは、毎日やっていても慣れる気がしない。

「いいところのお嬢様がリボンぐらい結べなくてどうするんですか」

「いいところのお嬢様だからこそリボンぐらい結べなくても問題ないんです。
だから、これからもずっと楓が結んでね」

こっちは自分の気持ちを隠そうと必死なのに、そんなことお構いなしにとびきり可愛い笑顔で、これからもずっとなんて言ってくる優李が、愛しさを超えてもはや憎たらしい。

「早く食事済ませて。あと、食事が終わったら奥様が部屋に来るようにって」

さっきまで笑顔だった優李の顔が一瞬にして曇る。

「そう、分かった」とだけ言って俺が運んできた食事を淡々と口に運んでいく。

リボンが結べない人と同一人物とは思えない程、一つ一つの所作が綺麗で、やっぱりいいところのお嬢様なんだと再認識する。

どれだけ欲しても決して手に入らない存在。
だとしても、これからもずっと側にいたい。
たとえ一生好きだと伝えられなくても、側にいられるならそれでいい。
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