真実の愛は嘘で守って・・・。
楓は知らないことが多い。

本当はリボンを結べるけど、平静を装い耳を赤くしながら結んでくれる楓が可愛くて、できないふりをしていることを、楓は知らない。

私が楓の気持ちに気づいていて、私も同じ気持ちであることも、もちろん知らない。

そして、一生教えるつもりもない。

私が楓を愛していると周りに知られれば、罰を受けるのは楓だ。

楓を守るためにも、私は怪しまれないようどこかの貴族と結婚して、これまでどおり楓が従者として側にいてくれたらそれだけでいい。

そして時々、本当の気持ちを嘘のように、楓に伝えられればいい。

それぐらい楓は私にとって特別なのに、当の本人は血だけが特別だと思っていて、すぐに血を差し出そうとしてくるので困ってしまう。

正直、あまり飲みたくない。

楓の血が不味くなった訳ではなく、むしろその逆で、年々美味しく感じるようになり、時々止まらなくなりそうな時がある。

血が欲しくて仕方ない時がある。

まさに、今のように。

先程まで寒さを感じていた体は熱を持ち、どうしようもなく喉が渇く。

「はぁ、はぁ」

息も荒くなり、意識が朦朧としてくる。

「優李!」

戻ってきた楓が私の状態を見て、私の元へ駆け寄る。

来ないで。

そう言いたいのに喉が渇いて声が出せない。

「優李!どうした?!大丈夫か!」

楓を突き飛ばしたいのに、意志に反して腕は楓の首に回る。

「優李?」

血が欲しい。

私は本能のまま楓の首に牙を立てた。

「くっ・・・」

突然、深く首を穿たれ痛みに顔を歪ませる楓。

私はそんな楓を気にも留めず、溢れ出る血を夢中になって啜る。

「ゆう・・・り・・・」

正気を取り戻した時には、青白くなった楓が力なく私の腕からすり抜けた。

「楓?」

名前を呼んでもピクリとも動かない。

「嘘だよね?楓、起きて。ねぇ、楓!」

どうしよう。私が楓を殺してしまった。
嫌だ、嫌だ、嫌だ・・・!
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