リナリアの花が散る頃に。
生きるため
「ねぇ、私たちどこに行けばいいのかな」
「ごめん、僕にもわからないや」
ふふっと笑って椿は言った。
こんな状態で家出なんて大丈夫なのだろうか。もし、椿のお父さんが優しい人だったら、とても心配されるんじゃないのかな。
それは私たちには踏み込めない話なので、お互い口にはしなかった。
辺りは段々と足元が見えなくなってくるような暗さになってきた。
「椿はさ、この状況、怖くないの?」
「ものすごく怖いよ。でも、これがさやかのためになるなら、全然怖くない」
「何か矛盾してない?」
沈黙が続くことはなく、お互い口数が増えている。
握られた手には、物凄い力がこめられており、少し椿の手は震えていた。
ほんとに、強がりなんだから。
そういう私は、ものすごく怖かった。
先もわからない道を永遠と進んでいく私たちを、星が見守る。
道を照らしてくれるかのように。どこかへと導いてくれるかのように。
「ねぇ、今日はどこで寝るの?」
「ネットカフェってところもあるんだけど、防犯カメラとか、時間の問題で行かない方がいいと思うんだよね。」
早口で続ける。
「だから、人通りの少ない公園とかで寝るのが無難だと思うんだ。嫌だとは思うけど」
「え、椿って家出経験者?」
「え、なんで?」
「いや、凄く物知りだなって思って」
私がそう尋ねると、彼はふふっと笑って私の手を握り直した。
「まぁ考えて色々僕なりに調べてたんだ」
「ふぅん、そっか」
お互いのためにそれ以上は聞かないことにした。この判断が正しいかどうかは分からないが、椿のことを思ってした判断に違いはなかった。