リナリアの花が散る頃に。
何だか暗い雰囲気になってしまい、慌てて場の空気を整えようとした。
「ね、ねぇ!椿もさ、ここで写真撮ろうよ!」
「うん、いいよ」
すると、水族館の職員の女性に声をかけられた。写真を撮ってあげますよとのことだった。
「はい!では、そこの足元にある印の上に立ってください〜!」
「椿!早くおいで!」
立ち位置に立ち、ポーズを考える。
私たちは普通にピースにした。
「はーい!では撮りますね〜、はいチーズ!」
その瞬間、ほっぺたになにか柔らかい感触が伝わってくる。
そして、職員さんが顔を真っ赤にしてスマホを渡してきた。
「では!お、お幸せにぃ!」
「ね、ねぇ椿⋯⋯」
「写真、みてごらん」
椿の顔を覗けば、さっき泣いていたのは、嘘かのように小悪魔のような笑みを浮かべていた。
「写真みるよ?じゃあ」
そこに写っていたのは、私のほっぺにキスをしている椿と、固まっている私だった。
見た瞬間、顔が赤くなるのがわかった。
「へっ!?つつ、椿!何してんの!?」
「ふふっ、さっき慰めて貰ったお礼だよ。いや、だった、、?」
「い、嫌なわけない!!」
「ふーん?」椿はそう言って、私の顔を覗く。
私はそれを全力で阻止してながら次のエリアに早足で向かった。
「ねぇ、さやか!待ってってばー」
そう、言われているにも関わらず私は、そんな言葉に聞く耳を持つ余裕はなかった。