リナリアの花が散る頃に。
運命
写真を撮ったあとから一時間がたった。
とても楽しい時間だったけれど、あの後はずっと椿の話は耳に入ってこなかった。
「まずいかも。さやか!逃げるよっ」
そう言って椿は私の腕を強い力で引っ張られた。何があったのだろう。
「ねぇ、椿っ」
「ここにしゃがんで⋯⋯」
「ねぇ、椿!何してるのって聞いてるんだけど⋯」
「警察がいたんだ」
「え?」
確かにもうそろそろバレたっておかしくはない。でも、カメラには気をつけたはずだったけど甘かったのかな。
「どうしよう、椿」
段々と呼吸が荒くなっていくのを実感する。
この美しい青い世界の中に、私たちのことを知っている人が居ることにとても気持ちが悪い。
「いやだよぉ⋯⋯椿⋯私殺されちゃうよ⋯⋯」
「大丈夫、僕がしっかり伝えるから。だからさ、もう終わりにしようか」
「⋯⋯え?」
「警察さん、あなた達が探しているのは僕達ですよね」
そう声警察官に声をかける。
いやだ。⋯⋯⋯⋯嫌だ嫌だ嫌だ。
また、戻っちゃうじゃんか。嫌だよそんなの。
「椿っ⋯」
「大丈夫、僕が傍にいるよ」
いつもだったら、そんな言葉一つで安心できる。でも今は全くもって違った。
無理だ、もう終わったんだ。
私たちはもう、ここまでなんだ。
「ダメじゃないか、家出なんて!とにかく今は警察署に行こう」
『はい。』
「その前に、僕達の話を聞いてくれますか」