オルガンイズムにあがく鳥
「完全オート操縦でも、運転手は必要なんですね?」

紫苑は後部座席から運転手に向かって訊ねた。

服は着替えをもらった。ガウンでもなければ、外の世界で着ていたボロボロの洋服でもない。

ジーパンに柄シャツ。そしてジャケット。それから、そこそこに生きていけるだけのお金……。

だったらタバコもほしかったのだが、さすがにここまでしてもらってそれを言うのは、図々しいだろう。

「人の足に磁石はつけられませんからね。車とぶつかる心配はなくとも、人間や犬猫まではどうにもどうにも」

運転席の桜田は前を見ていたが、その手にはコーヒーを持っていた。

椅子はリクライニングに倒され、手も足もすっかりくつろいでいる。

とてもではないが、人や犬猫が飛び出してくるという危険予測をしているようには、思えない。

それだけ、交通整備、リヤカーのシステムが完璧に近いということか。

まったく――外の世界では未だに少ないガソリン燃料が現役だというのに……。

「ン?」

とまで考えたところで、リヤカーが止まる。

なにかと思えば、車が長い列を作っていた。渋滞だ。

列の先では、警察らしき男が赤色棒を振り回している。
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