オルガンイズムにあがく鳥
女の声は、やはりとても冷えていた。

「喫煙だけで悪人になるなんて、どれだけ窮屈な世界なのよ? アメリカの禁酒法みたいな過ちを犯したいの?」

「ごもっとも」

アメリカ史上、最大の悪法と呼ばれる禁酒法。

その世界が生んだのは、酒を密売することで力をつけたギャング達。

ギャング大国の完成。

厳しすぎる法律は、逆に治安の悪化を招く、これでもかというぐらいの代表例。

「まあ、そういうことよ」

中身の知れない木箱に腰かけた女も、同様にタバコをくわえる。

両者の間に立ち上る紫煙は、ここでは風に吹かれることもない。

「で……俺をここに呼んだ理由は?」

「藪から棒ね」

「人を脅迫するようなヤツに言われたくはないな」

「ふ、それもそうね」

女は笑った。タバコが、指に挟まれる。

「桂木紫苑さん、アナタ、外の世界にいたんだってね?」

「……昨日までは」

「一週間……じゃないの?」

「あ、ああ、そうか」

眠っていたから記憶がないが、一週間、昏睡していたのだった。

つまり、実質俺はここに来て一週間も経っていると。

道理で、住居やら仕事やら、手が回っているわけだ。
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