オルガンイズムにあがく鳥
籠の鳥がかわいそう?

羽を休めても、えさをもらい、敵に怯える必要もない籠の鳥が、かわいそう……か。

いいじゃないか。

マインドコントロールだろうと、洗脳だろうと……それで安全に、幸せに暮らせるというのななら。

少なくともパン一切れのために人殺しが起きる世界より、よっぽどマシだ。

「頭は切れるみたいね。でも、そこまでしなくても、もっと単純明快なことでいいの」

「なんだよ?」

『法律』を作ることを邪魔するのが目的でないのなら、なにが目的だ?

女の目は、冷たく、あどけなく、それ以上に真剣だった。

「私と一緒に、街を脱出してほしい」

「……」

「……」

「……は?」

「もう一度言おうかしら」

「いや、いい。聞こえてはいた」

木箱から降りた女が、胸に手を当て、吐き出すように訴えてくる。

「お願いよ、私は耐えられないの! 壁に囲まれ、自由なく、拘束された世界が! 白く清浄だからこそ、それ以上を与えられない空間が! 規制、束縛、秩序、法律、そんなもので息苦しいこの街が、耐えられないのよ!!」

耐えられない、だと……?

まったく……この、バカが……。
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