オルガンイズムにあがく鳥




その場所を簡素に説明するなら……ただ、暑い場所だった。

水気がなくなった大地はひび割れ、草木の生える余地を赦さず、それでもなお日光は容赦なく大地を町を……そして人を照らし続けていた。

そんな中、地平線の陽炎を背に、ひとりの男が歩いていた。

ボロボロになったシャツはすでにもともとが何色かわからなくなるぐらいに汚れ、

ジーパンと思われるズボンも、すでに本来の青とはほど遠い色をしていた。裾は擦りきれ、膝は破れていた。

「くそ……っ」

目的地を目の前にして、男はぼやいた。

目的地――巨大な壁に背を預けながら、ずるずると腰を落とす。

巨大な壁、いや、それは塀……オルガンイズムとの境界。

選ばれし者が住める楽園との、隔壁。

『善良なる市民』はこの中で暮らすことが赦され、それに付属しない『善良ではない市民』は、その外の世界で暮らすことを余儀なくされる。

差別――そんな生易しい言葉では赦されない、これはもはや、区別だった。
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