オルガンイズムにあがく鳥
聞いていて、腹が立った。

「それで、パン一切れを巡り、血を流すのか……」

「……は?」

これだから――これだから……

「自由なんて、ろくなもんじゃねぇって意味だよ」

紫苑はタバコを吐き、踏みつけた。

「悪いがそんな話なら、俺はお断りだ。もし外に出たいならひとりでやれ。俺まで巻き込むな」

これ以上の会話は、無駄だった。

なんというロマンティストだ。

理想を追い、現実が見えていなさ過ぎる。

自由がほしいだって?

その程度の理由で外に出たいというのなら、勝手に外に出て、そして、野たれ死んで後悔しろ……!

「ちょっと、どこに行くの?」

「触れるな」

女が肩を掴んできたので、全力で払い除ける。

出口へ向かう。

「俺は帰る。これ以上の会話、胸くそ悪い。終わりだ」

「――そう……ならいいわ。でも、外の世界の自由を知っているアナタが、この世界の清浄さにどこまで耐えられるかしら、ね?」

女の、薄ら笑い。

余計に、腹が立った。
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