オルガンイズムにあがく鳥
決して外の世界もまったく住みにくいというわけではなかった。

島国特有として水も豊富だったし、土地だってそれなりに豊かだった。

そう、だったのだ。

三年前の、飢饉までは。

作物は育たず、動物は死に絶え、そして多くの人が死んでいった。

少ない作物を巡り、多くの争いが起きた。

パン一切れだった――パン一切れを巡り、多くの人が死んだ。

たったコップ一杯の水のために、多くの家族が離散した。

誰もが思った。

なぜ、こうも、違う?

中と外で、なぜこうも、違うのだ、と。

「区別されたんだ、仕方ないだろ……?」

だれに言うでもない言葉。

仕方ないとわかっていても、納得はできない世界。

理解と納得は違う。

男はポケットをまさぐる。

出てきたのは、しわくちゃになったタバコ。

これが最後の一本。火をつけて、一息。

紫煙が真上に昇り、風に吹かれ、消えた。

男の目は、それをぼんやり見ている。

「ここまで、か……」

なんとなく察した。

すでに一週間、なにも食べていないのだから。

それでも、ここまで来ればなんとかなると思っていたが、現実はそこまで簡単に微笑んではくれない。
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