オルガンイズムにあがく鳥
そして祭壇にいるのは十字架にかけられたイエスでもなく、幼子を抱くマリアでもなく、一人の少年――いや少女――いや、そのどちらとも取れない、人間だった。

「やあ――君が、紫苑、だよね。とても逢いたかったよ」

人間……アダムは優雅に振り返った。

真っ白な一枚布だけしか羽織らず、髪の毛は長くもなく短くもない。金色なのか赤色なのか、それとも黒とも思えるような髪の毛。

発する声も、中性的で男なのか女のかハッキリしない。

唯一の特徴といえば、噂通り目がないためか、真っ白い布で目隠しをしていた。

その白布一枚向こうは、伽藍の眼窩か、それとも、ガラス玉か……。

まさに『無』……そう感じさせる人間……いや、そもそも人間と呼べるかどうかすら不明の、『生物』だった。

「はじめまして、アダム」

とりあえず紫苑は、アダムに右手を差し出す。

アダムも右手を差し出し、握手。

口だけが、とても綺麗に――いや、無垢に、笑った。
< 46 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop