オルガンイズムにあがく鳥
「……へぇ――あはっ、オルガンイズムの住人では見られない、鍛えられた手だね」

「苦労してるんでね」

いったい、コイツの目的はなんだ……?

「ねえ、私は仕事を果たしたし、戻ってもいいかしら? 今日は休日なのよ」

口を開いたエヴァは、いつの間にやら禁煙パイポをくわえている。

苦々しい顔を浮かべている辺り、彼女がいかにアダムを嫌いなのか、物語っていた。

「おや、……イヴ、君は禁断の果実を置き去りにして、行ってしまうのかな?」

アダムが、エヴァへ薄ら笑いを見せる。

イヴ……エヴァの英語読み。

日本ではこちらのほうが浸透しているようだが、実際に聖書を読んだ者なら、イヴとエヴァでは全然違う意味をなすことくらい、常識だ。

「私の名前はエヴァよ。その名で呼ばないでほしいわ」

眉をしかめて、エヴァはアダムを睨み付ける。

世界最高の法律――

オルガンイズムの人達が神と崇める存在――

それでもエヴァは、平然とそいつを睨み付ける。

原初の人間『アダム』と対等に並び立つ……ゆえに『エヴァ』……なるほど、いい名だ。
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