オルガンイズムにあがく鳥
「あは、ごめんね。それじゃあエヴァ。君は蛇の誘惑に負け、僕の前に禁断の果実を持ってきた。それでも君はこの場を立ち去るのかな? それじゃあ、僕だけがエデンを追い出されて、君は楽園に残ると言ってるようなものだね」

なんの、話だ……?

「だったら、その禁断の果実を食べなければいいだけの話でしょ? 一応言っといてあげる。ものすごく不味いわよ、それ」

エヴァがニヤリと口角を吊り上げる。

どうやら……

「わざわざ連れてこられて『果実』扱いとは……参ったね」

紫苑は、そういうことかと溜め息をついた。

中の世界しか知らない連中にしてみれば、確かに外の世界を知っている俺は『禁断の果実』……

自由という名の蛇に惑わされ、のこのこエヴァに摘み取られ、アダムに食われようとしてる、知恵の実というわけだ……。

「あは、あははは、ごめんね。たしかにシオンと言えば、聖書にも現れる聖人の名前だね」

よくご存知で。さすがはアダムか。
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