オルガンイズムにあがく鳥
大きな戦争があった。

たった一切れのパンを巡る、しかし大きな戦争が。

ここまで来たのは逃げてきたのではなく、助けを求めてだった。

ここまで来れば、『選ばれた者』ならば、なんとかしてくれると思ってきた。

だけど……ここまでだ……。

頭上にそびえ、空の景色を割ってしまっている巨大な壁は、どうやったって乗り越えられるとは思えない。

ここから声を出したとして、中に届くかさえ……。

結局のところ、自分は選ばれなかった『善良ではない市民』だ……。

いや、選ばれなかった時点ですでに、人間ですらないのかもしれない。

だから、ここで野たれ死ぬ。

中の人間を羨みながら――

選ばれなかったことを妬みながら――

ここで――

「わりぃ、みんな……どうやら俺も、ここがエンドだ……」

くわえたタバコから昇る紫煙を眺め、思ったことが口に出た。
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