オルガンイズムにあがく鳥
「それはどうも。なにせ俺は、禁断の果実らしいのでね……?」

「あはっ、エヴァ、実におもしろいものを連れてきてくれたね。たしかに彼は、僕を誘惑するのに相応しい。すごく魅力的だ」

これが……本当に世界最高の『法律』となるのか……?

これが、すべての人が下る、法律?

だとしたら――これを崇拝する誰もの頭が、おかしい。

エヴァが腕を組む。

「は。だったらとっとと誘惑されて、服でも着るがいいわ」

服を着る――それは、人間が知恵を得た証拠。

神に背いた、証明。

「そしてこの楽園から出ていけ……って? あはは、まったくもう。エヴァがこんなにアダムに対して反抗的なんてことは、聖書のどこにも書かれてないよ。困ってしまうね」

肩をすくめるアダム。

エヴァの眉が、器用に片方だけ跳ねた。

「残念ながら、私は神様や、ましてやアナタの骨から作られたわけじゃないの。原初の女性と同じにしてもらっては困るのよ 」

エヴァはただの名前。

名前はただの識別コード。

コードは、ただの区別。

聖書に出てくる人物とは、違う。
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