オルガンイズムにあがく鳥
「それはね、僕も同じだよ。少なくとも今の僕は服を着ているしね」

そしてアダムは、紫苑に近づく。

子供が興味を向けるように、正面から顔が寄せられた。

目隠しを巻いているとはいえ、アダムには世界が見えているかのようだった。

至近距離、その唇が無垢に――いや、今度は綺麗に、笑った。

「あはは、澄んだ目だなぁ……綺麗な目だなぁ……いいなぁ、いいなぁ、素敵な目だなぁ……」

汚いは綺麗……綺麗は汚い……その笑みと言葉は、あまりにおぞましかった。

「!」

思わず、紫苑はアダムを突き飛ばす。

「アダム!」

エヴァは、どたりと倒れるアダムへ駆け寄――らなかった。

きつい瞳が、紫苑を見る。

「い、今のは正当防衛だろ……」

「そうだとしても、万が一アダムが怪我でもしたら、取り返しのつかないことになるのよ!!」

神様を傷つけることは、人間には赦されない行為……。

だから――傷つけたら取り返しはつかない……。

――いっそのこと――

(銃で撃ち殺してやろうか?)

そんなことを本気で思った。
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