オルガンイズムにあがく鳥
「あはっ、あはははっ、暴力だ……暴力だ暴力だ。……あ、痛いね、暴力……あははっ、こんなの初めての経験だよ、ふふ」

アダムは、倒れた拍子にどこかぶったのだろうか、笑っていた。

キミガワルイ。

そして同時に、腹が立つ。

「その程度で、なにが暴力だ……なにが痛いだ……恵まれた人生だよ、それは……」

立ち上がりながら、アダムの笑いが、やや暗くなる。

「ふふふ、まったくだね……エヴァの言った通りだ。この果実、本当に美味しくない。恐ろしいほどだね。いや、だから魅力的なんだけどさ」

まだそれを引っ張るか……。

「だから言ったでしょ? おまけに固い殻に包まれてるし、棘まであるのよ」

エヴァはエヴァで、立ち上がるアダムに手を貸そうとはしない。

さっきもそうだ。駆け寄ろうとして、しなかった。

本音と建前。

結局、コイツはコイツでアダムが怪我をしても構わないと思っているのだ。
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