オルガンイズムにあがく鳥




自分にないものを、人間は求めるものだという。

自分とに通ったものを、人間は認めるのだという。

そうして自分の好むものを、人間は選ぶのだという。

摂理とは言わない。常識とも言いがたい。

理論だった。

「持論……むしろ、自論かしら」

タバコを指に挟み、ひとりぼやくエヴァの横で、メイドロボが口をパクパクさせた。

音声回路を少しいじってある。このロボは、声を発することはできない。

自分のことは自分でできる。だから、あまり余計なことにいろいろと口を挟んでほしくない。

奇しくも、エヴァは紫苑と同じ考えだった。

安易に満たされる日常。苦労のない正常。

英国淑女としての誇りも手伝って、エヴァは人としての尊厳を盾に、メイドロボとは生活の一線を画していた。

もっとも、監視者とわかるこれと深く付き合いたくはない、そして、オルガンイズムへのどうしようもない八つ当たり、という意味もあったが。
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