オルガンイズムにあがく鳥
自分にないものを人は求め、自分に似通ったものを人は認め、そうして好みを選び出す。

自分の理想も、求める環境も、そうならば、そう。

「私ひとりしかいないと思ってたわ」

独り言は、独り言。

たとえ人型のなにかがそばに仕えていても、それは生きていない。

生きていない思想や理論など、印字された量産哲学にすら劣る。

「世界は狭い」

またぼやくエヴァの証文では、テレビがついていた。

しかし、部屋の明かりはついていない。

カラフルな番組が、醒めたエヴァの表情を、ちらちらと照らす。

「狭い世界なのに、人は孤独になれるなんてね」

紫煙がテレビの明かりに照らされる。

口をパクパクしていたメイドロボが煙の充満を感知し、換気を始めた。

その口は以前としてパクパクとしている。

声が出ていなくても、わかっている。どうせ、健康被害云々をひっきりなしに申し立てているのだろう。

「アナタは生きてないわ」

そんなメイドロボをぼんやり眺めながら、エヴァは頬杖を突く。
< 58 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop