オルガンイズムにあがく鳥
人間は自分にないものを求め、似通ったものを認め、そうして好みを選び出す。

思想や理想、生き方も同じ。

それは、生涯の伴侶も。

一瞬、どこにも焦点を合わせていない瞳に、彼が浮かんだ。

紫苑――外の世界から来た男。

自分にはないものを持ち、自分のように確固とした意思を持ち……

「Give me a break」

勘弁して、と我ながら笑った。

タバコの火を揉み消して、席を立つ。もう寝ようと思った。

テレビは、そのままつけておく。

こんなに空虚な世界で、沈黙など耐えられない。

カラフルな光を放ちながら、テレビは笑っていた。
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