オルガンイズムにあがく鳥
まったく……。

「エヴァといい、アダムといい……なぜ外の世界にそれほど関心を示すんだろうな?」

それが、一番の謎だった。

あんなところ、なにもない。

いきるのに精一杯で、明日の保障はどこにもなくて、夜に怯え人に怯え、力に怯える。

そんな世界だ。

「じゃあ、なんでそんな世界で人は生きるんだろうね? 僕はそんな環境にいたら、自殺を選びそうだよ」

……確信を突きやがる。

「っ、そんなの……知るかよ」

「嘘だね」

「……」

「それは、嘘、だね」

誤魔化しは、しかし効かないようだった。

「君は知ってる。そうだろ。答えてみてくれないかな……? なぜそんな殺伐とした世界で、人は生きようとするのか。本当は、明確な理由があるよね。僕はそれをぜひ聞きたい」

……大した、話ではないが……

「想像、したことあるか……? 十人の人間が飢えに喘いでいた。そんなところへ、手に入ったのはたった一切れのパンだ。とても十人の腹を満たす量じゃない。そんな時……人はどんな行動に出ると思う?」

それは、過去の話。

殺伐と、暴力の溢れていた世界……。
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