オルガンイズムにあがく鳥
だけど、それでも……

「均等に分けるべきだね。まったく食べないことと、少しでも食べておくことは全然違う」

模範回答だな。

「それは正解で、間違いだ。俺達が取った行動は、最も若いヤツに、そのパンをくれてやることだった」

誰も反対しなかったし、誰も反論しなかった。

みなが思ったのだ。

最も若い人間に――まだ幼かった、俺に食べさせるべきだ、と。

「生存本能としては考えにくいね、そんなこと……愚策だよ」

「だろう、な……だけど俺達はそうやって生きてきた。誰もが次へ繋ぐために、必死に生きて、手を取り、協力して、時には自分を犠牲にして……そうやって生きてきた」

「うん、やっぱり愚策だね。少なくとも良策とは言えない」

「……でも、そうだったんだ」

だから、簡単に死ぬなんて選択肢は赦されない。

あの時、パンを分けてくれた残りの九人は、死んでしまった。

殺伐とした世界だった。死に物狂いの世界だた。大地も命もからからだった。

夜に怯え、人に怯え、力に怯えた……。

でも、だからこそ……人々は、その恐怖を取り払うために手を取り合って――必死に生きていた。
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