オルガンイズムにあがく鳥
声のトーンがもとに戻る。

「バグっていうのは、日本優越化のバグよ」

「日本、優越化?」

「そう、アダムには『日本の繁栄を第一に考える』ようにバグが仕掛けられているの」

「……アダムに、ねぇ」

つまり、世界の『法律』に。

世界へ適用されるルールに。

世界に、『日本の繁栄を』……と。

「わかりやすい陰謀だな」

素直な感想だった。

つまり、あの時のアダムの言葉には、こう付け加えられるのだ。

―― 僕なら、一切れのパンで十人の人間を救うよ……ただし、日本人ならね ――

ふむ、たしかにイギリス人であるエヴァが激昂するのもよくわかる話だ。

日本人は全世界の人口、100分の1ぐらいだ。100人を殺し、1人を生かすことは非常に簡単だ。

十人で一切れのパンを分けるどころではない。

100人のパンが、1に集まる。

「感心している場合? アダムが完成してご覧なさい。キリストもムハンマドも仏陀も、みんな天照の前にひれ伏すのよ」

「……少なくとも、それは世界平和とは呼ばないのか?」

確認程度の、質問。
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