オルガンイズムにあがく鳥
「貧困よりマシだ」

紫苑が口にし、

「虚無の世界よりマシだわ!」

エヴァが叫んだ。

「……」

「……」

「……水掛け論だな」

「そうね――人はエデンを追い出されたのよ。この世界に楽園なんてありはしないわ」

ごもっともだ。

「自由を選べば貧困が待ち――」

「裕福を選べば虚無が立ちはだかるわ」

「だな」

「そうよ。人工の、摂理だわ」

行きも地獄ならば、帰りも地獄。両者が共存するのはとても難しい。

「でもね、それでも私は自由を選びたいのよ」

その言葉は、エヴァの意思をはっきりと顕示する。

それが、紫苑とは違うエヴァの答え。

「だから、俺の邪魔をする……と?」

「ええ。私は誇り高き英国淑女――イエローモンキーに膝を突くなんてありえない」

そうか……。ならば俺は――

握り拳を作る。

もし、お前が自由を求めて立ちはだかるのなら、俺はそれを排除する必要がある。
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