オルガンイズムにあがく鳥
「よせ。勝てねぇよ、お前じゃ。歴然だ」

温室育ちのお嬢さまと、広野の死線を潜り抜けてきた青年。

技術を培った環境が違いすぎるのだ。

戦いは、むしろ本能が覚えている。

今のでわからなかったのか? まったく。

「黙りなさい。私は自由がほしいのよ……これ以上ただ、虚無しか待っていない未来に進むなんて、苦痛以外のなにものでもないわ!」

だから抗い、戦う。生きるために、自由を勝ち取るために。

ならば、平和とはなんだろう?

……奇しくもそれは……

(戦うことだ)

それが答えだった。

世界はそれを、衝突という。


人は尊厳を捨てては生きていけない。

「そうかよ……」

だったら、こちらも全力で臨む必要があるかもしれない。

こっちだってごめんだ。見えない未来に怯える毎日なんて、恐怖以外のなにものでもない……。

苦痛も恐怖も……人はどちらも、激しく嫌う。

エヴァが鉄棒を握り込み、腰をやや低くした。

しかし、丸腰である紫苑のほうが、圧倒的に有利。

環境もそうなら、体格も違いすぎる。

女が、男に敵うだろうか。

その細い腰と手足で、いったいどれだけの攻撃ができると?
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