オルガンイズムにあがく鳥
「悪いなアダム。ここまでだ」

紫苑は悟った。

これですべて悟った。

いや、今初めて、気付いたのかもしれない。

なんにせよ、辿るべきは、ここではなかった。

今もなお、外では貧困に喘ぐ仲間がいる。

だったらどうする?

すべきことは、ただひとつ。

パンを増やそう。

十人分まで。

いや、全員を救えるだけの数に。

パンを増やそう。

できるだろう。

できるはずだ。

「ぼ、僕を裏切るのか……?」

「アダム、俺とお前はいったいいつから仲間になった? 最初から、手なんて組んでないだろ」

アダムの声は、

「あ、あはは……僕が、間違って、いると……?」

「少なくとも、正しくねぇよ」

徐々に徐々に、

「っ、僕が完成すればっ、世界中のみんなが幸せになれるんだ……これは確定的な未来なんだぞ」

「だが、俺と俺の知ってる女は不幸になる」

なにかが崩落していた。
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