隠し味
「あー、ちょっと美嘉に呼び出されたから、俺もう行くわ」

 ジョッキに残っていたビールを喉へ流し込み、俺は適当な札を数枚、卓へ置いた。

「最後の晩餐タイムか?」
「おう。晩餐って言っても手作りわたあめだけどな」
「小学生かっ」
「まあでもこれで美嘉(あいつ)との仲は終わりだから。勢いよく食べてやるよ」
「はははっ。それで胃袋掴まれて離れ難くなったりして」
「まさか」

 じゃあな、とその場をあとにすると、俺は美嘉に指定された場所へと向かった。その場所があの人気(ひとけ)のない高架下でなければ、俺はもっとわくわくできたのに。
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