隠し味
俺が美嘉と不倫を始めてから、今日で三ヶ月が経つ。
きっかけはべつに、夫婦仲が悪かったとかそんなことではない。小学校にあがった子供との関係も良好だし、家庭に居場所がなかったわけでもない。ただそこにイイ女が見えたからつい手が出たって、それだけだ。それなのに相手が本気になった。それがいけなかった。
美嘉との不倫開始当初、同僚の和樹はこんな心配をしてきた。
「おい修二っ。次の不倫相手は鈴木美嘉かよ〜。さすがに同じ課はヤバいだろ同じ課はっ。会社の連中にバレるぞ」
独特な匂いがする電子タバコの煙をぷかーっと頭上に放ち、偉そうなことを言ってくる和樹の前、俺はドンと卓へ中ジョッキを置いた。
「会社の連中?そんなのバレてもどうってことねえよ、そこから嫁に連絡がいくわけじゃあるまいし。俺は家族にさえバレなきゃいいの」
「あーあー、そうかいそうかい。まあでも、お前の犯した罪は一度だってバレたことないもんなあ。こんなに何回もやってんのに」
「ははんっ。俺はちゃんと本気と遊びを分けてるから。和樹みたいなヘマはしねえよ」
「う、うるせえっ。過去のことは持ち出すなっ」
「家族を傷付けることなく不倫をする、そして家族にバレそうになったら身を呈してでもそれを防ぐ。これは俺にしかできないことだ」
「身を呈すねえ……いつか命まで懸けるんじゃねえぞ?」
「そこまでしなきゃいけないところまで追い詰められたら、俺の不倫癖も直るかもな」
ガハハと笑い、酒が進む。今思えばこの時引き返しておけばよかったんだ。
美嘉は見てくれが清楚で綺麗なだけの、危険な女だった。
きっかけはべつに、夫婦仲が悪かったとかそんなことではない。小学校にあがった子供との関係も良好だし、家庭に居場所がなかったわけでもない。ただそこにイイ女が見えたからつい手が出たって、それだけだ。それなのに相手が本気になった。それがいけなかった。
美嘉との不倫開始当初、同僚の和樹はこんな心配をしてきた。
「おい修二っ。次の不倫相手は鈴木美嘉かよ〜。さすがに同じ課はヤバいだろ同じ課はっ。会社の連中にバレるぞ」
独特な匂いがする電子タバコの煙をぷかーっと頭上に放ち、偉そうなことを言ってくる和樹の前、俺はドンと卓へ中ジョッキを置いた。
「会社の連中?そんなのバレてもどうってことねえよ、そこから嫁に連絡がいくわけじゃあるまいし。俺は家族にさえバレなきゃいいの」
「あーあー、そうかいそうかい。まあでも、お前の犯した罪は一度だってバレたことないもんなあ。こんなに何回もやってんのに」
「ははんっ。俺はちゃんと本気と遊びを分けてるから。和樹みたいなヘマはしねえよ」
「う、うるせえっ。過去のことは持ち出すなっ」
「家族を傷付けることなく不倫をする、そして家族にバレそうになったら身を呈してでもそれを防ぐ。これは俺にしかできないことだ」
「身を呈すねえ……いつか命まで懸けるんじゃねえぞ?」
「そこまでしなきゃいけないところまで追い詰められたら、俺の不倫癖も直るかもな」
ガハハと笑い、酒が進む。今思えばこの時引き返しておけばよかったんだ。
美嘉は見てくれが清楚で綺麗なだけの、危険な女だった。