隠し味
「はい修二くんっ。あーん」
美嘉はところ構わず俺の側にいたがった。料理の腕前に自信がある彼女は、毎回俺へ何かを作ってくる。
「今日はね、修二くんのために早起きしてお弁当作ったんだっ。隠し味も入ってるんだよ」
俺の嫁が用意した弁当の中身は容赦なくゴミ箱へ捨て、代わりに自身のものを俺の口へと運ぶ。
「おいし?」
「うん、んまい」
「奥さんのよりも?」
「うん、まあ」
「やったあっ!その煮物、ほんの少しオイスターソースが入ってるの。うちのお母さんが教えてくれた隠し味なんだ」
初めのうちはそれでよかった。子育て中の嫁が作る即席弁当よりもはるかに美味しかったのは事実だし、濃い目の味付けも俺に合っていたから。
「また作ってくるね、お弁当」
「おう」
「甘いものも平気?」
「うん、けっこー好き」
「じゃあデザートも作っちゃおっかなあー」
けれどそれを食べる場所が人気のないオフィスの屋上ではなく、人目につく休憩室や俺のデスクになったのは問題だし、さらには休みの日に自宅のチャイムまで鳴らすようになった彼女は大問題だった。
美嘉はところ構わず俺の側にいたがった。料理の腕前に自信がある彼女は、毎回俺へ何かを作ってくる。
「今日はね、修二くんのために早起きしてお弁当作ったんだっ。隠し味も入ってるんだよ」
俺の嫁が用意した弁当の中身は容赦なくゴミ箱へ捨て、代わりに自身のものを俺の口へと運ぶ。
「おいし?」
「うん、んまい」
「奥さんのよりも?」
「うん、まあ」
「やったあっ!その煮物、ほんの少しオイスターソースが入ってるの。うちのお母さんが教えてくれた隠し味なんだ」
初めのうちはそれでよかった。子育て中の嫁が作る即席弁当よりもはるかに美味しかったのは事実だし、濃い目の味付けも俺に合っていたから。
「また作ってくるね、お弁当」
「おう」
「甘いものも平気?」
「うん、けっこー好き」
「じゃあデザートも作っちゃおっかなあー」
けれどそれを食べる場所が人気のないオフィスの屋上ではなく、人目につく休憩室や俺のデスクになったのは問題だし、さらには休みの日に自宅のチャイムまで鳴らすようになった彼女は大問題だった。