隠し味
『修二くん、わたあめ食べられるよね?お祭りで売ってるのは高いから、今度自分で作ってみようかなあ』

 そんなメッセージが美嘉から送られてきたのは夏の真っ只中、八月のこと。別れようと告げてからもう一ヶ月は経つのにもかかわらず、あたり前のように彼女面をされて参る日々。
 出社すると、俺に許可も得ずデスクに置かれている弁当や手作りスイーツ。当然食べる気にはなれず、帰りのコンビニのゴミ箱へ放るが、しつこく何度だって置いてくる。

『美嘉が作るのは勝手だけど、俺はいらないから』

 そう冷たく返信しても、彼女の返事はとても明るかった。

『じゃあうまくできたら、修二くんにあーんしてあげるね』

 常識はずれか気狂(きちが)いか。そのどちら共に当てはまる美嘉を止められる人がいるのならば、俺はその人に大金をはたいても惜しくはない。
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