アンノウアブル!憧れだった先輩が部下になりました
歓迎会を計画してから五日が経過しようとしていた頃、千里の机には名前が書かれたコピー用紙が束になって置かれていた。一先ず紅葉には先輩命令で参加を説得させることができだが、残すはこの大勢の参加希望者である。
一体何人いるのよー。
その場しのぎの言葉で名前を貰ったはいいが、これだけの人数が収まる店があるわけもなく、千里は頭を抱えた。
この際、やはり紅葉には参加しないでもらった方が良かったのかもしれない。
千里はそう考えてため息を吐いた。蓮見や紅葉が来てからと言うもの色々と気を使う事が多くなった様な気がする。
そもそも、この歓迎会、蓮見は喜んでくれるのだろうか?昔の爽やかで人懐っこい彼ならまだしも、今の彼にはどうだろうか。
机に突っ伏しながら、悶々と考え事をしていると唐突に肩を叩かれた。
乱れた髪を整えることもせずに顔をあげると、そこには心配そうな表情で覗き込む紅葉の姿があった。
「まだ残ってたの?」
紅葉は机に置かれたコピー用紙を手に取ると、目頭を抑えて「やっぱ、俺参加すんの辞めます」と呟いた。
「でもせっかくの歓迎会なのに…」
「先輩の悩みの種は俺でしょ?、俺が参加しなきゃここまで人は来ねえッスよ」
自身の人気を認識しているのか、紅葉はコピー用紙をコンコンと叩く。
「ねぇ、紅葉。あんたって女の子に苦労した事ないでしょ」
別に紅葉のことを攻めたいわけではないが、彼がこんなに人気者である事に千里は内心腹が立っていた。そもそも、彼と関わる事がなければ今頃自宅に帰って缶ビールの一つでも空けていた頃だろう。
「考えたこともねぇ」
紅葉は特段気にした様子もなく答える。
「そんな事言っちゃって、今まで何人の女の子と付き合って来たのよ?白状なさい」
所詮、ウザ絡みと言われる奴だが今の千里にはそれを抑える術がない。
「ゼロだけど」
「え?」
予想外の答えに千里は目を丸くする。
「ゼロってことはないでしょう。こんな所で謙遜しなくていいのよ」
「別に謙遜なんかしてねぇ、本当に付き合った事とかねぇ」
驚いたー。
こんなに女子にモテるのだから、今まで取っ替え引っ替え、付き合っているものだと思っていたが、それはどうやら偏見だったらしい。
「本当に付き合ったことないの?」
「ねぇけど」
「なんで?」
「は?」
「だって、あんなにモテるなら女の子選び放題じゃない。それなのに、何で今まで一人も付き合わなかったのよ」
千里からすれば勿体無い話である。
「好きでもない奴と付き合っても楽しくねぇだろ」
「好きでもない奴って、紅葉君好きな子とか居たの?」
「…」
自ら地雷を踏んでしまった事に紅葉は押し黙る。
「あらあらー、貴方も隅に置けないわねえ」
千里はニヤニヤした表情で、紅葉の身体を小突く。
まさか、この男に好きな人なるものがいた事実におせっかいおばさんの血が騒いでしまう。
「このイケメン紅葉君のハートを射止めた女の子は一体どんな子だったのかな?」
「別に、どうでもいいだろ…」
「いいじゃない、昔の好きな子くらい」
「昔じゃねぇ…」
「え!もしかして現在進行形?!」
紅葉の爆弾発言に千里はいよいよ、そのお相手が気になってしょうがない。
「え、どんな子?職業は?その子とはまだ連絡とってるの?」
ぐいぐいと質問して来る千里に、紅葉は前髪を弄りながら顔を逸らす。
「教えなさいよ!やっぱり可愛い系?それとも美人系?まさか、モデルさんとか?」
勝手に一人で盛り上がる千里に紅葉はため息を吐く。何故に昔から女はこう言う恋バナが好きなのかー。
「顔は可愛い系、職業は…」
「職業は?」
「職業は…」
そこまで呟いて紅葉は押し黙った。
「やっぱ教えねぇ」
プイっと横を向いて顔を背けた紅葉に千里は「えー」と言ってブーイングする。
「それじゃあ、可愛い子って事しかわからないじゃない!別に特定しようなんて思わないから教えなさいよ!」
「嫌だ」
「じゃ、じゃあ他に特徴とかは?」
「…、小さくて華奢。ちょっと抜けてて時々危なかしい。困った人を放っておかない」
女子には全く興味がないと思っていた紅葉は予想に反して好きな女性の特徴を淡々と並べ立てる。
「あとは…、弱音を吐かない。ちょっと意地っ張りで負けず嫌い」
そう言って千里を見つめる。一瞬、その眼光にドキリと胸が脈打つが、多分それは突然見つめられたせいに違いない。
「なんか意外ね」
「?」
「もっとあしらわれると思ったけど、貴方も好きな子の特徴とかはちゃんと見てるのね」
「…そりゃ好きな奴なら見るだろ」
紅葉は少し頬を赤らめると再びそっぽを向いた。
「その人を好きになったきっかけは?」
「きっかけ…」
きっかけは多分あの日だー。
一体何人いるのよー。
その場しのぎの言葉で名前を貰ったはいいが、これだけの人数が収まる店があるわけもなく、千里は頭を抱えた。
この際、やはり紅葉には参加しないでもらった方が良かったのかもしれない。
千里はそう考えてため息を吐いた。蓮見や紅葉が来てからと言うもの色々と気を使う事が多くなった様な気がする。
そもそも、この歓迎会、蓮見は喜んでくれるのだろうか?昔の爽やかで人懐っこい彼ならまだしも、今の彼にはどうだろうか。
机に突っ伏しながら、悶々と考え事をしていると唐突に肩を叩かれた。
乱れた髪を整えることもせずに顔をあげると、そこには心配そうな表情で覗き込む紅葉の姿があった。
「まだ残ってたの?」
紅葉は机に置かれたコピー用紙を手に取ると、目頭を抑えて「やっぱ、俺参加すんの辞めます」と呟いた。
「でもせっかくの歓迎会なのに…」
「先輩の悩みの種は俺でしょ?、俺が参加しなきゃここまで人は来ねえッスよ」
自身の人気を認識しているのか、紅葉はコピー用紙をコンコンと叩く。
「ねぇ、紅葉。あんたって女の子に苦労した事ないでしょ」
別に紅葉のことを攻めたいわけではないが、彼がこんなに人気者である事に千里は内心腹が立っていた。そもそも、彼と関わる事がなければ今頃自宅に帰って缶ビールの一つでも空けていた頃だろう。
「考えたこともねぇ」
紅葉は特段気にした様子もなく答える。
「そんな事言っちゃって、今まで何人の女の子と付き合って来たのよ?白状なさい」
所詮、ウザ絡みと言われる奴だが今の千里にはそれを抑える術がない。
「ゼロだけど」
「え?」
予想外の答えに千里は目を丸くする。
「ゼロってことはないでしょう。こんな所で謙遜しなくていいのよ」
「別に謙遜なんかしてねぇ、本当に付き合った事とかねぇ」
驚いたー。
こんなに女子にモテるのだから、今まで取っ替え引っ替え、付き合っているものだと思っていたが、それはどうやら偏見だったらしい。
「本当に付き合ったことないの?」
「ねぇけど」
「なんで?」
「は?」
「だって、あんなにモテるなら女の子選び放題じゃない。それなのに、何で今まで一人も付き合わなかったのよ」
千里からすれば勿体無い話である。
「好きでもない奴と付き合っても楽しくねぇだろ」
「好きでもない奴って、紅葉君好きな子とか居たの?」
「…」
自ら地雷を踏んでしまった事に紅葉は押し黙る。
「あらあらー、貴方も隅に置けないわねえ」
千里はニヤニヤした表情で、紅葉の身体を小突く。
まさか、この男に好きな人なるものがいた事実におせっかいおばさんの血が騒いでしまう。
「このイケメン紅葉君のハートを射止めた女の子は一体どんな子だったのかな?」
「別に、どうでもいいだろ…」
「いいじゃない、昔の好きな子くらい」
「昔じゃねぇ…」
「え!もしかして現在進行形?!」
紅葉の爆弾発言に千里はいよいよ、そのお相手が気になってしょうがない。
「え、どんな子?職業は?その子とはまだ連絡とってるの?」
ぐいぐいと質問して来る千里に、紅葉は前髪を弄りながら顔を逸らす。
「教えなさいよ!やっぱり可愛い系?それとも美人系?まさか、モデルさんとか?」
勝手に一人で盛り上がる千里に紅葉はため息を吐く。何故に昔から女はこう言う恋バナが好きなのかー。
「顔は可愛い系、職業は…」
「職業は?」
「職業は…」
そこまで呟いて紅葉は押し黙った。
「やっぱ教えねぇ」
プイっと横を向いて顔を背けた紅葉に千里は「えー」と言ってブーイングする。
「それじゃあ、可愛い子って事しかわからないじゃない!別に特定しようなんて思わないから教えなさいよ!」
「嫌だ」
「じゃ、じゃあ他に特徴とかは?」
「…、小さくて華奢。ちょっと抜けてて時々危なかしい。困った人を放っておかない」
女子には全く興味がないと思っていた紅葉は予想に反して好きな女性の特徴を淡々と並べ立てる。
「あとは…、弱音を吐かない。ちょっと意地っ張りで負けず嫌い」
そう言って千里を見つめる。一瞬、その眼光にドキリと胸が脈打つが、多分それは突然見つめられたせいに違いない。
「なんか意外ね」
「?」
「もっとあしらわれると思ったけど、貴方も好きな子の特徴とかはちゃんと見てるのね」
「…そりゃ好きな奴なら見るだろ」
紅葉は少し頬を赤らめると再びそっぽを向いた。
「その人を好きになったきっかけは?」
「きっかけ…」
きっかけは多分あの日だー。