アンノウアブル!憧れだった先輩が部下になりました
「あれ、紅葉は?」
しばらく蓮見との会話を楽しんだ千里は紅葉の姿が見当たらない事に気がつくと、辺りを見渡す。
「あいつならだいぶ前に、怖い顔してどっか行ったぜ?」
蓮見は飲み終わった缶コーヒをゴミ箱へと捨てると、思い切り伸びをする。
「え、そうなの?」
「そうなのって、お前気づいてなかったのかよ」
今更紅葉がいない事に気づいた千里に、蓮見は苦笑する。
「全然気づかなかった…」
「ま、あいつ猫見てぇだからな」
言われてみれば、あのマイペースで何を考えているのかよくわからないあたりが猫にそっくりである。
「お前が構ってやんねぇから、へそ曲げてどっか行っちまったんだよ」
「わ、私のせいなの?」
「さぁ、どうだかな」
「な、何よそれ」
まるで全て見抜いた上で、真実をはぐらかす蓮見の態度に千里は少しむっとする。
「そもそも、貴方そんな紅葉と仲良く無いじゃ無い。なんで、そんなことわかるのよ」
「わかるさ、野郎のお前に対する態度見てたら一目瞭然。寧ろ気づいてないのはお前だけだよ」
「態度ならいつも通りだったけど?」
「そうじゃねぇよ…」
そう言うと今度は大きな欠伸をする。紅葉が猫であるなら蓮見はどちらかと言うと犬である。
「と、とにかく私はそろそろ戻るから、蓮見君もこんなところで油売ってないで早く戻りなさいよ」
「それ、お前が言う?」
今まで油を売っていたのは千里も一緒である。
「わ、私はちゃんと用があってここに来ただけだから」
「へいへい、そうですか」
やる気のない返答をする蓮見を置いて、千里は捜索一課の部屋へと戻ろうとする。しかし、ふと先ほどの女性のことが頭をよぎる。
「そ、そういえば」
「あ?んだよ」
一度蓮見に背を向けたはずの千里は再び蓮見に向きなおる。
「さっきの子は、その、誰?」
「さっきの子?」
既に記憶にないのか、蓮見は首を傾げる。
「さっき、ここで可愛い事務員の子と話してたじゃない」
少し聞くのが気恥ずかしかったが、このまま聞かないままでいるのもなんだか落ち着かない。
「あぁ、佐藤さんね。あいつ俺と大学一緒だったらしくてよ。大会とか応援に来てくれてたらしいんだよな、それでサッカーのこと色々と聞かれてた」
なるほど、蓮見のファンということかー。
「ふーん、そうなんだ」
「んだよ」
「いや、随分と可愛い子だったなと思って、朝ドラとかに出てそう…」
先ほど蓮見と会話していた女性のことを思い出しながら千里は素直な感想を述べる。
パッチリとした二重、綺麗な長い髪、形の良い唇。その全てが全国の男性のために、誂われたかのように見えるほどの美少女だった。
「まぁ、あいつミスコンのグランプリだからな」
「ミ、ミスコン?!」
「おう、大学で一番美人なんだとよ」
言われてみれば、どこか普通の人とは違ったオーラを纏っていたような気もする。
千里は大学時代の蓮見を知らないが、あんな可愛い子達に囲まれていたのかと思うと、なんだか気分が重くなる。
「確かに美少女だったもんね」
落ちる気分とは反対に、千里は名一杯元気そうな声を出す。そもそも、こうやって大人の蓮見と喋れていること自体、奇跡なのだ。
携帯のメールを交換したからと言って舞い上がってはいけない。
「あの子も呼べば良かったね、歓迎会」
「なんでだよ…」
「だって、蓮見君もああいう可愛い子が居てくれたら楽しいでしょ?」
自分なんかより、よっぽど楽しいに違いない。
「部署違ぇじゃん」とツッコミを入れる蓮見は大して興味も無さそうだが、その態度が余計千里を悲しくさせた。
蓮見にとって、あれくらいのレベルの女の子と喋るのは大したことではないのだ。ということは千里との思い出なんてこれっぽちも覚えていないだろう。
ここ最近、蓮見との距離感がおかしな事になっていた千里は改めて自分にいい聞かせる。
彼とは仕事が一緒だから、こうやって喋れている。
本来ならば、相手にもされないのだ。
「じゃ、今度こそ私は戻るね」
千里はそう言うと重たい気分のまま、ようやく休憩室を後にした。
しばらく蓮見との会話を楽しんだ千里は紅葉の姿が見当たらない事に気がつくと、辺りを見渡す。
「あいつならだいぶ前に、怖い顔してどっか行ったぜ?」
蓮見は飲み終わった缶コーヒをゴミ箱へと捨てると、思い切り伸びをする。
「え、そうなの?」
「そうなのって、お前気づいてなかったのかよ」
今更紅葉がいない事に気づいた千里に、蓮見は苦笑する。
「全然気づかなかった…」
「ま、あいつ猫見てぇだからな」
言われてみれば、あのマイペースで何を考えているのかよくわからないあたりが猫にそっくりである。
「お前が構ってやんねぇから、へそ曲げてどっか行っちまったんだよ」
「わ、私のせいなの?」
「さぁ、どうだかな」
「な、何よそれ」
まるで全て見抜いた上で、真実をはぐらかす蓮見の態度に千里は少しむっとする。
「そもそも、貴方そんな紅葉と仲良く無いじゃ無い。なんで、そんなことわかるのよ」
「わかるさ、野郎のお前に対する態度見てたら一目瞭然。寧ろ気づいてないのはお前だけだよ」
「態度ならいつも通りだったけど?」
「そうじゃねぇよ…」
そう言うと今度は大きな欠伸をする。紅葉が猫であるなら蓮見はどちらかと言うと犬である。
「と、とにかく私はそろそろ戻るから、蓮見君もこんなところで油売ってないで早く戻りなさいよ」
「それ、お前が言う?」
今まで油を売っていたのは千里も一緒である。
「わ、私はちゃんと用があってここに来ただけだから」
「へいへい、そうですか」
やる気のない返答をする蓮見を置いて、千里は捜索一課の部屋へと戻ろうとする。しかし、ふと先ほどの女性のことが頭をよぎる。
「そ、そういえば」
「あ?んだよ」
一度蓮見に背を向けたはずの千里は再び蓮見に向きなおる。
「さっきの子は、その、誰?」
「さっきの子?」
既に記憶にないのか、蓮見は首を傾げる。
「さっき、ここで可愛い事務員の子と話してたじゃない」
少し聞くのが気恥ずかしかったが、このまま聞かないままでいるのもなんだか落ち着かない。
「あぁ、佐藤さんね。あいつ俺と大学一緒だったらしくてよ。大会とか応援に来てくれてたらしいんだよな、それでサッカーのこと色々と聞かれてた」
なるほど、蓮見のファンということかー。
「ふーん、そうなんだ」
「んだよ」
「いや、随分と可愛い子だったなと思って、朝ドラとかに出てそう…」
先ほど蓮見と会話していた女性のことを思い出しながら千里は素直な感想を述べる。
パッチリとした二重、綺麗な長い髪、形の良い唇。その全てが全国の男性のために、誂われたかのように見えるほどの美少女だった。
「まぁ、あいつミスコンのグランプリだからな」
「ミ、ミスコン?!」
「おう、大学で一番美人なんだとよ」
言われてみれば、どこか普通の人とは違ったオーラを纏っていたような気もする。
千里は大学時代の蓮見を知らないが、あんな可愛い子達に囲まれていたのかと思うと、なんだか気分が重くなる。
「確かに美少女だったもんね」
落ちる気分とは反対に、千里は名一杯元気そうな声を出す。そもそも、こうやって大人の蓮見と喋れていること自体、奇跡なのだ。
携帯のメールを交換したからと言って舞い上がってはいけない。
「あの子も呼べば良かったね、歓迎会」
「なんでだよ…」
「だって、蓮見君もああいう可愛い子が居てくれたら楽しいでしょ?」
自分なんかより、よっぽど楽しいに違いない。
「部署違ぇじゃん」とツッコミを入れる蓮見は大して興味も無さそうだが、その態度が余計千里を悲しくさせた。
蓮見にとって、あれくらいのレベルの女の子と喋るのは大したことではないのだ。ということは千里との思い出なんてこれっぽちも覚えていないだろう。
ここ最近、蓮見との距離感がおかしな事になっていた千里は改めて自分にいい聞かせる。
彼とは仕事が一緒だから、こうやって喋れている。
本来ならば、相手にもされないのだ。
「じゃ、今度こそ私は戻るね」
千里はそう言うと重たい気分のまま、ようやく休憩室を後にした。