アンノウアブル!憧れだった先輩が部下になりました
 車を走らせる事数十分、三人はとある六本木の高級住宅地に到着した。

 今回、意外にも丁寧なドライブテクを見せた蓮見に千里は内心トキメキが止まらずにいる。

 「先輩、顔赤い」

 「へ?!そうかな?!」

 車を降りて早速、勘のいい紅葉から突っ込みを入れられる。蓮見はというと「体調悪いなら無理すんなよ」と相変わらずな鈍感力を発揮している。

 張り込み用のマンションはまだ建設途中との事だったが、既に内装は綺麗に組み立てられており、周囲に立つマンションとほとんど相違がない。

 三人は許可を取った502号室へと向かう。

 「うわぁ、凄ーい!」

 部屋へ入室早々、千里はその綺麗さに素直に感動する。

 キッチンはマンションだというのにアイランド型で、リビングには大きな大窓が取り付けられている。
 
 「みてみて!シャワールームガラス張り!」

 千里は洗面所のドアを開いて、初めて見るタイプの浴室にテンションが上がる。

 「ラブホ行った時みたいな感想やめろ」

 蓮見は何とも言えない表情で、千里を諭すと紅葉が「先輩はラブホなんて行かねぇ」と謎のツッコミを入れる。

 「そ、そうよ!変なこと言わないでよ蓮見君」

 突然顔を赤くして反論する千里に、蓮見は苦笑する。

 「なんだ、お前らガキだな」

 蓮見はどこか勝ち誇った様な表情で床に胡座を描いて座る。

 「そんなとこで遊んでっから、才能潰すんだよ」

 「あんだと…、テメェも人のこと言えねぇだろ」

 「俺は真面目にサッカーしてたけど?」

 再び不穏な雰囲気になり始めた二人の間に千里が割り込む。

 「ハイ、わかった、わかった。あんたら二人がモテるのはよくわかったから!喧嘩しない」

 「別にんなこと言ってねぇだろ」

 蓮見は不満そうに口を尖らす。

 
 三人は各自、パソコンを広げるとターゲットの松下家を双眼鏡を使って確認する。しかし、昼間だというのにカーテンが閉められており室内を確認する事ができない。

 「参ったわね、これじゃ全然見えない」

 千里は困った様に、双眼鏡から顔を離す。

 「どおりで俺達を寄こすわけだ」

 どうやら、張り込みと言うだけあってそう簡単には証拠が掴めない相手らしい。

 「これは中々時間がかかりそうね…一先ず分担しましょう。蓮見君は双眼鏡係、紅葉は報告書作成と近隣の聞き込み係。私は大量に残った事務処理って感じでどうかしら?」

 千里の提案に蓮見は顔を顰める。

 「何で俺が双眼鏡係なんだよ…」

 「あら、それなら事務処理する?」

 千里は母親のように両手を腰に当てて尋ねる。

 「俺も聞き込みがいい」

 「断る」

 蓮見の要求を紅葉は一刀両断する。

 「お願いよ、蓮見君。時間ごとでローテーションすればいいでしょ?」

 千里のお願いに、蓮見は諦めた様子で双眼鏡を手に取とった。これでなんとか、張り込み開始である。
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