アンノウアブル!憧れだった先輩が部下になりました
それから直ぐに松田は警視庁へと連行され、事件は一見落着した。
動機は浅見に対する歪んだ恋心によるものだった。
「でも、蓮見君。よく御手洗さんが協力者で何か隠してるってわかったわね…」
帰りの道すがら、千里は蓮見の車に揺られながら事件の事を振り返る。
「まあな。明らかにファーストコンタクトから怪しかったしな…」
蓮見は欠伸を噛み殺しながら、ハンドルを横にきる。
「でも、生徒に恋する教師なんて、漫画の世界での話だと思ってたけど意外と居るもんなのね」
千里は流れる景色を眺めながら、素直な意見を述べる。
「別に意外でもなんでもねぇだろ。よくある話だって…」
「あら、まるで、自分もその経験がありますって言い草ね?」
千里の言葉に蓮見は鬱陶しそうにハンドルの上に両腕を置く。どうやら赤信号に引っかかってしまったようだ。
「しゃあねぇだろ、事実なんだから…」
「え?まさか教師と付き合ってたことあるの?」
本気で戸惑った様子の千里に、蓮見は小さくため息を吐く。
「何?、俺が教師と付き合ってたら何か問題でもあんの?」
「教員による児童生徒性暴力防止法が適用されるから違法よ」
まさかの正論に蓮見は口ごもる。
「…それって、最近適用されたやつだろ。確か罰則規定が設けられてないやつ」
蓮見の言葉に千里は顔を顰める。
「罰則が無かったら、破っていいなんて決まりないでしょ?」
「んだよ…、やけに突っかかるな」
「私は刑事として当然の主張をしているわけで…」
「未遂だ、未遂。実際に付き合ったことなんてねぇよ」
「ちょっと、私の話を遮らないでくれる?」
「別に遮ってねぇだろ」
「遮ったわ」
「うるせぇな…、遮ってねぇだろ」
千里はそんな蓮見の態度に目頭が熱くなる。何故彼はこんなにイラついているのか。
「…」
気づけば鼻を啜りながら、涙をこらえて居る自分に千里は情けなくなる。どうもこの前から色々あり過ぎて情緒不安定なままだ。
「…」
「…悪い」
そんな千里に蓮見は慌てて謝罪の言葉を口にするが、千里の目からはとめどなく涙が溢れ出る。
「…どうして」
「え?」
「どうして、あの時キスなんてしたのよ…」
千里の質問に蓮見は一瞬目を見開くも、すぐにそっぽを向いてしまう。
「この前のは…、その…、冗談っていうか、なんつーか…」
最も聞きたくなかった言葉に、千里の中で何かがキレる。
「…降ろして」
「は?」
「降ろして!」
すると千里は、蓮見の握るハンドルを思い切り路肩の方へと引っ張る。
「おい!危ねぇだろ!何考えてんだ!」
何とか路肩で停車した車の扉を千里は乱暴に開け放つと、雨が降りしきる外へと飛び出す。
「それはこっちのセリフだ!!!馬鹿!」
そう言うと、一直線にどこかへ向かって歩き出す。
驚いた蓮見は慌ててシートベルトを外すと自身も車の外へと飛び出す。
「おい!待てよ!ここから駅まではとんでもねぇ道のりだぞ!!」
「うるさい!ついてくんな!!」
初めて見た半狂乱の千里に、蓮見は焦った様子で後を追おう。
「おい!待てって!なに怒ってんだよ!」
「うるさい!」
「待てって!」
「着いてくんな!」
「おい!そっちは!」
次の瞬間、千里の体が思い切り蓮見の腕によって引っ張られる。あまりにも強い力に千里は体制を崩し、そのまま蓮見の元へと倒れこむ。そして、それと同時に大型のトラックが二人の前ギリギリを通過していった。
「……」
突然の出来事に千里は冷や汗をかく。
「ッぶねぇ…」
背中越しに蓮見の鼓動がダイレクトに伝わってくる。どうやら蓮見が間一髪の危機を救ってくれたらしい。
「……」
千里の中の怒りが徐々に静まり返っていく。しかし、自棄になって飛び出してきた手前なんといっていいのかわからない。
すると、突然背後から体を抱きしめられた。
「…よかった」
その一言に千里は目を見開く。
「…よかった、よかった、生きてる」
まるで自分自身に聞かせるようにそう呟く蓮見に、千里は戸惑う。
「蓮見君…?」
千里は蓮見へと向き直ると、今度は思い切り真正面から抱きしめられる。
「よかった…、よかった…」
僅かに震えている蓮見を落ち着かせるように千里は蓮見の背中を撫でてやる。
「…ごめん、大丈夫よ、私は。だから落ち着いて」
まるで弱った狼のような蓮見の姿に、千里は何度も声をかけて落ち着かせてやる。
「…ごめん」
「え?」
蓮見が微かに呟いた。
「いいの、私も悪かったし…」
「違う、この前の…」
蓮見は千里の肩に頭を預けながら、か細い声で呟く。
「我慢できなかったんだ…」
「…我慢?」
蓮見の言葉に千里は心の中で首をかしげる。
「ずっと、会いたかった子と二人きりになれたから…」
その言葉に千里は戸惑う。ずっと会いたかったとはどういう事だろう。
「我妻…」
「…何?」
すると、蓮見は千里の耳元に唇を寄せてこう言った。
「ちゃんと説明するから、俺についてきて…」
動機は浅見に対する歪んだ恋心によるものだった。
「でも、蓮見君。よく御手洗さんが協力者で何か隠してるってわかったわね…」
帰りの道すがら、千里は蓮見の車に揺られながら事件の事を振り返る。
「まあな。明らかにファーストコンタクトから怪しかったしな…」
蓮見は欠伸を噛み殺しながら、ハンドルを横にきる。
「でも、生徒に恋する教師なんて、漫画の世界での話だと思ってたけど意外と居るもんなのね」
千里は流れる景色を眺めながら、素直な意見を述べる。
「別に意外でもなんでもねぇだろ。よくある話だって…」
「あら、まるで、自分もその経験がありますって言い草ね?」
千里の言葉に蓮見は鬱陶しそうにハンドルの上に両腕を置く。どうやら赤信号に引っかかってしまったようだ。
「しゃあねぇだろ、事実なんだから…」
「え?まさか教師と付き合ってたことあるの?」
本気で戸惑った様子の千里に、蓮見は小さくため息を吐く。
「何?、俺が教師と付き合ってたら何か問題でもあんの?」
「教員による児童生徒性暴力防止法が適用されるから違法よ」
まさかの正論に蓮見は口ごもる。
「…それって、最近適用されたやつだろ。確か罰則規定が設けられてないやつ」
蓮見の言葉に千里は顔を顰める。
「罰則が無かったら、破っていいなんて決まりないでしょ?」
「んだよ…、やけに突っかかるな」
「私は刑事として当然の主張をしているわけで…」
「未遂だ、未遂。実際に付き合ったことなんてねぇよ」
「ちょっと、私の話を遮らないでくれる?」
「別に遮ってねぇだろ」
「遮ったわ」
「うるせぇな…、遮ってねぇだろ」
千里はそんな蓮見の態度に目頭が熱くなる。何故彼はこんなにイラついているのか。
「…」
気づけば鼻を啜りながら、涙をこらえて居る自分に千里は情けなくなる。どうもこの前から色々あり過ぎて情緒不安定なままだ。
「…」
「…悪い」
そんな千里に蓮見は慌てて謝罪の言葉を口にするが、千里の目からはとめどなく涙が溢れ出る。
「…どうして」
「え?」
「どうして、あの時キスなんてしたのよ…」
千里の質問に蓮見は一瞬目を見開くも、すぐにそっぽを向いてしまう。
「この前のは…、その…、冗談っていうか、なんつーか…」
最も聞きたくなかった言葉に、千里の中で何かがキレる。
「…降ろして」
「は?」
「降ろして!」
すると千里は、蓮見の握るハンドルを思い切り路肩の方へと引っ張る。
「おい!危ねぇだろ!何考えてんだ!」
何とか路肩で停車した車の扉を千里は乱暴に開け放つと、雨が降りしきる外へと飛び出す。
「それはこっちのセリフだ!!!馬鹿!」
そう言うと、一直線にどこかへ向かって歩き出す。
驚いた蓮見は慌ててシートベルトを外すと自身も車の外へと飛び出す。
「おい!待てよ!ここから駅まではとんでもねぇ道のりだぞ!!」
「うるさい!ついてくんな!!」
初めて見た半狂乱の千里に、蓮見は焦った様子で後を追おう。
「おい!待てって!なに怒ってんだよ!」
「うるさい!」
「待てって!」
「着いてくんな!」
「おい!そっちは!」
次の瞬間、千里の体が思い切り蓮見の腕によって引っ張られる。あまりにも強い力に千里は体制を崩し、そのまま蓮見の元へと倒れこむ。そして、それと同時に大型のトラックが二人の前ギリギリを通過していった。
「……」
突然の出来事に千里は冷や汗をかく。
「ッぶねぇ…」
背中越しに蓮見の鼓動がダイレクトに伝わってくる。どうやら蓮見が間一髪の危機を救ってくれたらしい。
「……」
千里の中の怒りが徐々に静まり返っていく。しかし、自棄になって飛び出してきた手前なんといっていいのかわからない。
すると、突然背後から体を抱きしめられた。
「…よかった」
その一言に千里は目を見開く。
「…よかった、よかった、生きてる」
まるで自分自身に聞かせるようにそう呟く蓮見に、千里は戸惑う。
「蓮見君…?」
千里は蓮見へと向き直ると、今度は思い切り真正面から抱きしめられる。
「よかった…、よかった…」
僅かに震えている蓮見を落ち着かせるように千里は蓮見の背中を撫でてやる。
「…ごめん、大丈夫よ、私は。だから落ち着いて」
まるで弱った狼のような蓮見の姿に、千里は何度も声をかけて落ち着かせてやる。
「…ごめん」
「え?」
蓮見が微かに呟いた。
「いいの、私も悪かったし…」
「違う、この前の…」
蓮見は千里の肩に頭を預けながら、か細い声で呟く。
「我慢できなかったんだ…」
「…我慢?」
蓮見の言葉に千里は心の中で首をかしげる。
「ずっと、会いたかった子と二人きりになれたから…」
その言葉に千里は戸惑う。ずっと会いたかったとはどういう事だろう。
「我妻…」
「…何?」
すると、蓮見は千里の耳元に唇を寄せてこう言った。
「ちゃんと説明するから、俺についてきて…」