ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「ジャン!」


 振り返ったジャンは大層驚いた表情をしている。チャコが来るとは思わなかったのだろう。チャコがそばに歩み寄ってもその表情はまだ変わっていない。


「ジャン、今日来てくれてありがとう。嬉しかった」


 チャコのその言葉で、ジャンはようやくいつもの優しい微笑みを浮かべてくれた。


「あのね、ジャンに話したいことがある」


 もしもジャンがここにいたら、チャコは絶対に伝えようと思っていた。見つけた夢のことを。だって、それはジャンが見つけてくれた夢なのだから。どうしてもジャンに知っておいてほしかった。

 チャコは自分の想いが伝わるよう、ジャンとしっかりと目を合わせた。ジャンも見つめ返してくれる。チャコは目をそらさぬようにして、伝えたかったその言葉を口にした。


「私ね、歌を仕事にしたい。挑戦したい。どう思う? できると思う?」


 ジャンは大きく目を見開き、驚きの表情を浮かべた。けれど、すぐにその目を細め、口元にもきれいな笑みを浮かべると、はっきりと頷いてくれた。


「ジャン! ありがとう。私頑張ってみる」


 そっと頭を撫でられたから、ジャンが励ましてくれているのだとわかった。すごく嬉しかった。彼に認めてもらえることが何よりの励みになる。

 チャコはそのままそれに浸っていたかったが、彼に言わなければならないことがもう一つある。むしろそれが本題だ。ジャンの反応を想像するだけで身がすくみそうになる。けれど、この想いこそ伝えなければならない。チャコはまたしっかりと目を合わせると、静かにその口を開いた。


「ねぇ、ジャン。私ジャンのギターで歌いたい。ジャンのギターがいい。ジャンも一緒にやろう?」


 ジャンのギターがあるからこそチャコは歌える。どうしてもジャンと一緒にその夢を追いたかったのだ。
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