ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 チャコは決してジャンから目をそらさずにその表情を観察した。やはりというべきか、ジャンはとてもつらそうな表情をしている。自分のことを語りたがらないジャンだから、それは無謀な願いだとはわかっていた。それでもほんの少しの望みにかけて聞いてみたかった。そして、伝えておきたかった。チャコの夢はジャンと共にあるのだということを。

 これ以上は苦しめたくなくて、もうわかったからとチャコは諦めの言葉を口にしようとした。けれど、チャコがその言葉を口にするよりも早く、ジャンは表情は変えぬままにゆっくりと頷いてみせた。表情が伴ってはいないが、間違いなく肯定の意思を示していた。


「!? ジャン! ありがとう、嬉しい! いっぱい歌おう、演奏しようね!」


 興奮してそう述べれば、ジャンはまだつらそうな顔をしているが、それでももう一度頷いてくれた。


「ジャン、ありがっ、うわっ」


 もう一度「ありがとう」と伝えようとしたら、ジャンに強く強く抱きしめられた。ジャンが自ら抱きしめてくれるのは初めてだった。チャコを抱きつかせるようにはしても、自分から腕を回したことは一度もなかったのだ。

 ジャンが求めてくれたようでチャコは嬉しかった。想いを返したくてチャコもきゅっと抱きしめた。
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