ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「それはアウトじゃない? 子供にそんなに詰めよったらダメでしょ。下手すりゃ警察沙汰じゃん……」
「へ? いや、子供って、同い年くらいならよくない? まあ、ちょい下かもだけど」


 チャコのその言葉に、恵と由香は驚き、顔を見合わせている。


「え、小学生じゃないの?」
「私も小学生をイメージしてた」


 チャコが天使みたいな美少年としか言わなかったから、年齢のイメージに大きな食い違いが生じていたのだ。


「さすがに小学生じゃないよ。私より背高かったもん」
「なんだ、びっくりしたー。ん? でも、それってつまり同い年くらいの男に詰めよったってことじゃん……それ、ウザがられてるんじゃない?」
「えっ!?」


 恵の言葉にチャコはショックを受けた。本当にウザがられていたら悲しい。だが思い返してみても、ジャンはそんな素振りは見せていなかったように思う。


「……でも隣でずっと聴いてても何も言わないよ?」
「え、ずっとって、そんな質問攻めにしてるの? それはウザいでしょ……」
「質問はそんなにしてないよ!」
「じゃあ、何聞いてるのさ」


 二人の会話は全く噛みあっていない。チャコが肝心なところをすっ飛ばして話すからこういう誤解がたびたび生まれるのだ。


「何ってギターだよ」
「どこからギター出てきた……」
「え、さっき言わなかったっけ?」
「言ってないわ……」


 しばしの沈黙が流れる。


「チャコは天使さんのギターを聴きにいってるってこと?」


 由香が実に簡潔にまとめてくれた。

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