ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
そして翌日。帰りの電車に乗る前にどこかで昼食を取ろうと考えていたら、航平から会いたいと連絡がきた。電車の時間を考えるとあまりゆっくりはできないので、昼食を一緒にとることにした。
「チャコ、これ見てみろ」
航平は店に入って注文を済ませるとすぐに一つの動画を見せてきた。
「っ!? これ!」
その動画を見てチャコは驚いた。そこにはチャコがずっと追い求めている人物が映っていた。ジャンがギターを弾きながら歌っている。そう、ジャンが声を出して歌っているのだ。見た目に似合わず随分と力強い歌声をしている。
「あいつだろ? あのさ、俺の友達に江川ってやついたの覚えてるか?」
急に話が変わって、一瞬何のことかわからなかったが、中学のころ航平と親しくしていた人物に江川という人がいたのを思いだした。
「……あー、うん」
「その江川に見せられたんだよ、その動画。ずっとあいつのこと、どこかで見たことある気がしてたんだけど、どうしても思いだせなかった。でも、名前聞いてようやく思いだした。こいつも『江川』だよ」
「え……」
「江川、あー、俺のダチのほうの江川さ、俺らの高校から三駅くらい離れたところにある男子高に行ってたんだよ。違う高校に行ってもさ、俺は時々連絡取ってて、それで聞いたんだ。同じクラスに同じ名字のやつがいて、そいつが無茶苦茶歌が上手いって。で、それ見せられた。あいつは『江川悠輝』っていうらしい」
「えがわはるき……」
どうやら由香の予想は正しかったらしい。チャコは思わずその名前を繰り返した。
「昨日、あのあと江川に連絡取って聞いてみたんだよ。あいつのこと」
「え?」
ジャンのことを聞いたと言われて、チャコは胸がきゅっと締め付けられるような心地がした。ジャンのことがわかるかもしれないという期待と、知りたくない事実を知らされるのではという恐怖がない交ぜになっていた。
「連絡先とかまではさすがにわかんなかった……でも、あいつに何があったのか聞いてきた。江川も全部知ってるわけじゃなかったみたいだけど、大体のことはわかった」
「っ」
「どうする? 聞くか? お前にとっては結構つらい話かもしんねぇけど……聞きたい?」
「聞きたい」
チャコは迷わずそう答えた。航平のその言い方からいい話でないのはわかったが、それでもチャコに聞かないという選択肢はなかった。
しかし、航平がこれからしようとしているその話はチャコの想像を絶するほどつらく悲しいものだった。
「チャコ、これ見てみろ」
航平は店に入って注文を済ませるとすぐに一つの動画を見せてきた。
「っ!? これ!」
その動画を見てチャコは驚いた。そこにはチャコがずっと追い求めている人物が映っていた。ジャンがギターを弾きながら歌っている。そう、ジャンが声を出して歌っているのだ。見た目に似合わず随分と力強い歌声をしている。
「あいつだろ? あのさ、俺の友達に江川ってやついたの覚えてるか?」
急に話が変わって、一瞬何のことかわからなかったが、中学のころ航平と親しくしていた人物に江川という人がいたのを思いだした。
「……あー、うん」
「その江川に見せられたんだよ、その動画。ずっとあいつのこと、どこかで見たことある気がしてたんだけど、どうしても思いだせなかった。でも、名前聞いてようやく思いだした。こいつも『江川』だよ」
「え……」
「江川、あー、俺のダチのほうの江川さ、俺らの高校から三駅くらい離れたところにある男子高に行ってたんだよ。違う高校に行ってもさ、俺は時々連絡取ってて、それで聞いたんだ。同じクラスに同じ名字のやつがいて、そいつが無茶苦茶歌が上手いって。で、それ見せられた。あいつは『江川悠輝』っていうらしい」
「えがわはるき……」
どうやら由香の予想は正しかったらしい。チャコは思わずその名前を繰り返した。
「昨日、あのあと江川に連絡取って聞いてみたんだよ。あいつのこと」
「え?」
ジャンのことを聞いたと言われて、チャコは胸がきゅっと締め付けられるような心地がした。ジャンのことがわかるかもしれないという期待と、知りたくない事実を知らされるのではという恐怖がない交ぜになっていた。
「連絡先とかまではさすがにわかんなかった……でも、あいつに何があったのか聞いてきた。江川も全部知ってるわけじゃなかったみたいだけど、大体のことはわかった」
「っ」
「どうする? 聞くか? お前にとっては結構つらい話かもしんねぇけど……聞きたい?」
「聞きたい」
チャコは迷わずそう答えた。航平のその言い方からいい話でないのはわかったが、それでもチャコに聞かないという選択肢はなかった。
しかし、航平がこれからしようとしているその話はチャコの想像を絶するほどつらく悲しいものだった。