ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「チャコ、自分じゃそこまで自覚してないみたいだけど、チャコの歌声は本当に特別なものなんだよ。チャコの歌声を聴いてると心が洗われるような気がするんだ。自分の嫌なところがなくなって消えていくような気がする」
「そんな大げさな」
「大げさなんかじゃない。チャコの歌が好きな人はたくさんいるだろ?」
「……うん」


 自分で認めるのは恥ずかしい気もするが、応援してくれている人たちがいるのは確かだ。


「だから、チャコの歌を聴いても、つらいだなんてこれっぽっちも思わなかった。むしろずっと聴いていたかった」
「嘘……だって、あのとき泣いてた。苦しそうだった」


 カノンに合わせて歌ったとき、ジャンは苦しそうな表情をして泣いたのだ。それがチャコの歌のせいだということもわかっている。


「あー……あのときはいろんな感情が沸き上がってそうなってしまった……チャコは歌がただ上手いだけじゃなくて、もっと音楽の才能に溢れてるって気づいたんだよ、あのときに。それで、その才能を目にした嬉しさと羨ましさと、この先チャコをその道に導いてみたいっていう気持ちと、でもあのときの自分ではその力になるのは難しいかもしれないっていうもどかしさと、いろんな気持ちが合わさって、涙が止まらなくなった。でも、何より感じたのは愛しいって気持ちだった」
「ジャン……」


 そんなふうに思ってくれていただなんて知らなかった。苦しい想いをしているのだと思っていた。

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