ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~

4. あの場所へ

 二人はもう一つの想い出のあの場所へやってきた。看板を見るだけで心が躍りそうになる。丘の上で想いを確かめあったあと、ジャンが一緒に『Joy』へ行こうと言うので二人でやってきたのだ。



「こんばんはー!」
「チャコちゃん! 久しぶりだなー。元気にして……え? ぼうず……ぼうずなのか? お前……ばっかやろう! どれだけ心配したと思ってんだ!」


 しげさんはジャンの姿に気づくとその肩を強くつかみ、感情あらわに叫んでいた。


「すみません」


 ジャンは冷静な態度のまま、しげさんに向かってはっきりと謝罪の言葉を口にした。


「……お前……しゃべれるのか?」


 ジャンが声を出して話していることに、しげさんは大層驚いている。


「はい。ご心配おかけして、すみませんでした」
「うっ……そうか、そうか。よかった。何があったかは知らんが上手い方向にいったんだな?」
「はい」
「本当によかった」


 しげさんはジャンを抱きしめて泣いていた。周りにはいつものメンバーもいて、皆同様に目に涙を浮かべていた。

< 156 / 185 >

この作品をシェア

pagetop