ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
だが、安達家ではそうもいかない。母は千夜子と似ていて、とんでもないことでも割と受け入れられる度量があるが、父はとにかく普通の人間なのだ。常識的なことしか受け入れられない。だから、ジャンの猛攻に、父は顔を真っ赤にしている。
「なっ、それは脅しだろう! 冷静になりなさい。付きあうことは反対しないから。大体これからプロを目指そうって二人がどうやって生活するんだ。苦労するに決まってるだろう」
まだ顔を赤くしているが、それでも父は冷静に話をしようとしている。そんな父にジャンはさらなる追い打ちをかけた。
「それは心配いりません。今、これだけあります。私は作曲家としても活動しています。ありがたいことにヒット曲を生みだせたので、当面の生活には困らないだけの蓄えはあります。そう遠くない場所に家も持っていますので、すぐにでも一緒に生活できます」
ジャンがテーブルの上に出した通帳にはとんでもない額が記されている。
「!? はあー、まったく何なんだこれは……ああ、もう、わかった。じゃあ、まずは一緒に一年間生活してみなさい。それで二人がちゃんとやっていけるとわかったら認める」
条件付きとはいえ、父が認めてくれたと驚いていたら、真横からすぐさま反論の声が上がった。
「一年なんて待てません! せめて、一ヶ月! それならまだ耐えられます」
「そんな短い期間じゃ何もわからんだろう! ダメだ!」
「お願いします! 少なくともデビュー前には籍を入れたいんです!」
珍しく大きな声を出して父が言いあっている。二人のあまりの勢いにチャコはその様子を呆然と見ていた。
「なんでそんなに急ぎたがるんだ」
「芸能界なんてところに入ったら、悪い虫が寄ってこないとも限らないじゃないですか! だから、結婚しておきたいんです」
それはチャコも初耳だった。チャコのことを守ろとしてくれているのだとわかって、チャコは胸が高鳴った。
「なっ、それは脅しだろう! 冷静になりなさい。付きあうことは反対しないから。大体これからプロを目指そうって二人がどうやって生活するんだ。苦労するに決まってるだろう」
まだ顔を赤くしているが、それでも父は冷静に話をしようとしている。そんな父にジャンはさらなる追い打ちをかけた。
「それは心配いりません。今、これだけあります。私は作曲家としても活動しています。ありがたいことにヒット曲を生みだせたので、当面の生活には困らないだけの蓄えはあります。そう遠くない場所に家も持っていますので、すぐにでも一緒に生活できます」
ジャンがテーブルの上に出した通帳にはとんでもない額が記されている。
「!? はあー、まったく何なんだこれは……ああ、もう、わかった。じゃあ、まずは一緒に一年間生活してみなさい。それで二人がちゃんとやっていけるとわかったら認める」
条件付きとはいえ、父が認めてくれたと驚いていたら、真横からすぐさま反論の声が上がった。
「一年なんて待てません! せめて、一ヶ月! それならまだ耐えられます」
「そんな短い期間じゃ何もわからんだろう! ダメだ!」
「お願いします! 少なくともデビュー前には籍を入れたいんです!」
珍しく大きな声を出して父が言いあっている。二人のあまりの勢いにチャコはその様子を呆然と見ていた。
「なんでそんなに急ぎたがるんだ」
「芸能界なんてところに入ったら、悪い虫が寄ってこないとも限らないじゃないですか! だから、結婚しておきたいんです」
それはチャコも初耳だった。チャコのことを守ろとしてくれているのだとわかって、チャコは胸が高鳴った。