ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
第一章 ギター弾きの天使

1. 天使との遭遇

「ふんふんふ~ん」

 自転車で風を切って走る中、チャコはお気に入りの曲を鼻歌で歌っていた。

 本当は大きな声を出して思いきり歌いたいけれど、さすがに通りすがりの人たちに聞かれるのは恥ずかしくて、周りに聞こえない程度に歌う。でも、段々と調子づいてきて、気づけばその鼻歌も随分大きなものに変わっていた。それは周囲の人たちに気づかれるほどに。

 だが、もはやチャコはそんなことなど気にしていない。ただただお気に入りの曲を歌うのが楽しかった。


 そんな楽しい気持ちで家までの帰り道を走っていれば、河川敷でギターを弾く人物がふと目に留まった。

 この河川敷で楽器を弾く人は珍しくも何ともない。よくある光景だ。

 それなのに、なぜかチャコの目はその人物に引きつけられてしまった。いや、引きつけられたのは耳だったのかもしれない。はっきりとは聞こえていなかったのに、どうしようもなくそのギターを聴いてみたい衝動に駆られたのだ。


 チャコは土手の上に自転車を止め、そっとその人物に近づいてみる。遠くからではわからなかったが、近づいてみればどうやらその人物は随分と若い人のようだった。

 ある程度距離を保ったまま後ろからそっと回り込む。そして、正面からその人物を見みてれば、そこにはなんと―――天使がいた。
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