ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「……はぁー。やっぱりジャンのギターと一緒に歌うのいいな。ねぇ、童謡もいいけどさ、J-POPとか弾けないの?」


 チャコはジャンの演奏に合わせてもっといろんな曲を歌ってみたかった。でも、童謡はそんなに知っているわけではないし、普段ジャンが弾く曲も知らない。最近流行りの曲や有名なJ-POPなら歌えるのになと思ったのだ。

 ジャンは難しい顔をして考え込んでいる。もしかしたらJ-POPは聴かないのだろうか。それならばしょうがないと諦めようかと思ったところで、ジャンがある一節を弾いてみせた。


「! 弾けるじゃん!」


 三年くらい前に流行った曲だ。原曲もギターの弾き語りだったから、ギターの演奏に合わせて歌うにはちょうどいい。チャコはジャンの演奏に合わせてまた歌いはじめた。今度はときどき目を合わせながら歌う。チャコはその時間がとても楽しかったし、ジャンも楽しそうな顔をしていた。気づけば二人の周りに聴衆が集まっていて、促されるままにいろんな曲を歌い奏でた。こんなふうに人に聴かれながら歌うのなんて初めてですごく恥ずかしかったけど、でもそれ以上にチャコは楽しくて嬉しい気持ちのほうが大きかった。



 この日以来、チャコはジャンのギターを聴くばかりではなくて、いろいろな曲をリクエストして一緒に歌った。ジャンのギターももちろん好きだから、ただ黙って聴く時間もあるが、チャコにとってはどちらの時間も大切で素敵なものだった。
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